本研究は、マイクロ秒精度で同期可能な汎用ネットワークインタフェースカード (NIC) を用いて、パケットへのタイムスタンプ精度を従来のミリ秒精度からマイクロ秒に向上させる汎用ソフトウェア機構の開発,及び高精度なタイムスタンプの活用を目的とする. 2019年度は、マイクロ秒以上の高精度な時刻同期とタイムスタンプが可能なNICを複数用いて、ネットワークケーブル長の測定精度、ルータを介した処理の遅延について実験と評価を行った.2020年度は,商用ISPネットワーク,全国規模の実験ネットワークに計測サーバを複数設置し,高精度なタイムスタンプを利用したネットワーク品質の計測を実施した.各サーバから特定サーバへの遅延を計測し, PTP ハードウェアタイムスタンプを用いることでサブマイクロ秒精度でのゆらぎ計測を実施した.2021年度は,高精度時刻の応用としてインターネットにおける映像・音声通信というリアルタイム性を重視した通信を実現するためのAudio over IP (AoIP) ソフトウェアの設計と実装を行なった.実装を通じてリアルタイム性を必要とする通信の実現に必要な諸課題を明らかにした.また,前年度はネットワーク上の遅延のみを計測していたが,実際のインターネット上における音声・映像通信の遅延等の時刻特性を明らかにするために,ウェブ会議システムのログデータ解析を実施した.その結果,端末の通信手段,ネットワーク特性に応じて遅延,ジッタ,映像・音声品質に特徴があることが明らかになった.
|