研究課題/領域番号 |
19K11940
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
川島 龍太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00710328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NFV / DevOps / ネットワーク運用管理 / 可視化 / DPDK |
研究実績の概要 |
ソフトウェアを中心とした次世代ネットワークの中核となるNFV(ネットワーク機能仮想化)ノードについて、統一的な方法でノード内部の詳細なメトリクス収集を行う基盤システムの基本設計を行い、そのプロトタイプシステムであるNFV-VIPPの開発を行った。特に今年度においては、NFVノード内における通信フローの(実際の)経路を効率的に追跡する手法の検討および実装を行った。
NFVノードでは、仮想マシン/コンテナ形式の仮想化されたネットワーク機能 (VNF) が同時に複数展開される。さらに、階層化されたソフトウェア抽象化によって、NFV ノード内部におけるパケット処理が不明瞭になる。トラブルシューティングに必要なパケット転送パス、パケットドロップ/遅延箇所の特定が困難になるため、従来からの運用管理手法に基づいたネットワークの運用管理は現実的ではない。現在、通信事業者が自ら VNF を開発する事例が増えているが、前述した理由のため、経験豊富な開発者にとっても高性能な VNFの開発は困難である。さらに、代表的なパケット処理高速化機構であるDPDK (Data Plane Development Kit) は、CPU、メモリ、NICなどのハードウェア資源を占有するため、やはり既存の運用管理手法ではNFV ノードの性能要因をチェックできない。そこで本研究では、NFVノード内部の実装に関連するメトリクスを対象とした、統合的なメトリクス収集フレームワーク (NFV-VIPP) を提案している。本フレームワークはVNF内部のメトリクスを他のコンポーネントに対して透過的に公開することで、既存のNFVノードを対象とした運用管理システムを補完することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3つの研究課題を設定してそれぞれについて独立に取り組みを進める計画を立てている。今年度においては、「NFVノード内における通信フローの経路可視化」という研究課題に集中的に取り組んだ。NFVノード内ではネットワーク機能の動作実体であるVNF/CNFだけでなく、仮想スイッチも含めた様々なソフトウェアシステムが有機的に連動しており、既存の経路監視システムではNFVノード内の経路を特定することはできない。したがって、こうしたNFVノードの特性を考慮した「効率的な」経路監視システムの実現が望まれている。
今年度の達成状況として、目標通りNFVノード内部における通信フローの経路情報を取得するための基本方針を立案し、プロトタイプシステムを開発してその効果を実証することができた。具体的には、NFVノード内における各通信ポートにおいて、通過する各パケットにポート情報を付加することで、NFVノード内部の実際の経路を正確に捉えること ができた。本プロトタイプは、実際的なパケット処理を行うデー タプレーンと監視プレーンを分離する設計を採用することによって、 10 Gbps級の通信トラフィックにも対応可能できるようになった。また、Zabbixなどの既存の監視ツールと連携する機能も備えることで、一般的なネットワーク管理者によるNFVノードの内部状態を考慮した運用管理を可能にするシステム構成にもなっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として、「NFVノード内部でのパケット所要時間などを把握する仕組みの実現」があげられる。今年度までの取り組みによって、NFVノードの負荷状態や通信経路を捉えることはできるようになったが、依然としてNFVノード内部におけるパケットドロップの発生箇所およびその要因の把握は困難なままである。したがって、現在のプロトタイプシステムをベースとして、この問題に対応できるようにさらなる調査・開発を行う必要がある。
具体的には、今年度の成果であるNFVノード内部におけるパケットのリアルタイム追跡機能をさらに発展させ、経路中の任意の箇所においてパケットの通過状況を把握する仕組みを実現する。実際にパケットドロップが発生した場合、過去の成功例との対比によってドロップ個所を絞り込むことが可能になる。さらに、ベアメタル/VM/コンテナ形式のVNF に対応するための仕組みも考案する必要がある。提案手法の仕組みを各VNF内部に直接展開する方法が考えられるが、既存のVNFへの影響を最小限に抑える必要があり、この点も大きな研究課題となる。最終的には、取得した情報をサーバ側で一元的に処理し、ネットワーク運用に活用する必要がある。例えば、OpenStackやKubernetesなどのオーケストレーションツールと連携し、NFVノードの状況に応じて適応的にVNFのマイグレーションやオートスケーリングを行うための方法論なども今後の検討課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延により、国内外における学会発表のための旅費を計上できな かったため、繰越金が発生した。次年度においても新型コロナウィルスの影響が見込まれるため、実験機材の増強分に充てたい。
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