本研究の目的は,カオス理論を用いてLR-PONにおけるトラヒックの負荷の推定し,待ち行列理論を用いて,推定されたトラヒックに対して使用効率をあげつつ, 平均遅延時間を減少させる新たなパケット新たな帯域割当方式を期間内に実現することである. トラヒッ ク推定は,近年盛んに研究が進められている分野である機械学習とは異なり,超短期的な予測が可能となる.このような新たな観点からの LR-PON資源割当方式を設計するアプローチは,他に類を見ず極めて独創的な研究である.さらに,LR-PON特有 の問題である,伝搬遅延が大きくなることが原因で生じる遊休区間に着目することで,待ち行列理論のポーリングモデルにうまく適用することができることを用いて解析を進める予定であり,LR-PONの大枠を大きく変えずに実現可能である. 昨年度までは,カオス理論を用いるための基礎検討として,トラヒックが変動する一因となる,ストリーミング通信のビットレートの解析について行っている。さらに、LRPONを用いたエッジコンピューティングにおけるトラヒック解析を行うことで、遅延が起きる影響を調査し、短期的な予測を用いた手法として、エントロピーを用いて行うことで、DDoS検知精度向上を示している。 今年度は、カオス理論をトラヒック推定に応用するために、マルチメディアデータにカオスマップを用いることで、所有権認証と改ざん検知を行う手法を開発し、コピーペースト攻撃やクロッピング攻撃等の局所的な改ざんに強いことを示した。この手法と昨年度までのDDoS検知手法を応用することで、LRPON上で、通常のトラヒックのみならず攻撃が含まれたデータに対してもトラヒック推定を行うことが可能であることが示唆された。
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