研究課題/領域番号 |
19K11951
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
榎戸 智也 立正大学, 経営学部, 教授 (10360158)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情報システム / 情報通信工学 / 計算機システム / 省エネルギー / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では,実サーバを構成するハードウェアの電力消費特性だけでなく,実サーバ内で稼働している複数の仮想マシン上でのソフトウェアの実行も考慮した実サーバの電力消費モデルを提案し,提案した電力消費モデルをもとに応用サービスの信頼性,可用性の向上のためにクラウド・システム内の複数の仮想マシンに多重化されたオブジェクト(情報資源)に対して,システム全体の消費電力量を削減し,かつスループットを向上できる新たな同時実行制御方式を提案することを目的としている.2019年度は,マルチコアCPUを搭載した1台の実サーバ上で稼働した複数の仮想マシン上に複数のオブジェクトを配置し,各オブジェクト上でトランザクションから発行された演算を実行した場合の仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルを定義することを目的とした.2019年度は,オブジェクトが提供する演算を,オブジェクトの状態を変更する「更新演算」とオブジェクトの状態を取得する「出力演算」に分類し,これらの演算が仮想マシン上に配置された複数のオブジェクト上で同時に実行された場合の各演算の実行時間と実サーバの消費電力量の測定を行った.この実験結果をもとに,実サーバの保有する実コア数,論理コア数(スレッド数),実サーバ上で稼働している仮想マシン数および各オブジェクト上で同時実行される演算数等を考慮した仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルを定義した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,マルチコアCPUを搭載した1台の実サーバ上で稼働した複数の仮想マシン上に複数のオブジェクトを配置し,各オブジェクト上でトランザクションから発行された演算を実行した場合の仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルを定義することを目的とした.予定通り,オブジェクト上でトランザクションを実行した場合の演算の実行時間測定と実サーバの消費電力測定を実施できている.さらに,実サーバの保有する実コア数,論理コア数,実サーバ上で稼働している仮想マシン数および各オブジェクト上で同時実行される演算数等をもとに仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルを定義できていることから,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,初めに各オブジェクト上で実行される演算の実行系列と演算の特性をもとに各オブジェクト上で実際の実行を省略できる演算を定義する.例えば,あるオブジェクト上で部分更新演算の後に全更新演算が実行される場合を考える.このとき,部分更新演算の実行によるオブジェクトの状態変化は,後に実行される全更新演算により上書きされる.よって,部分更新演算の後に全更新演算が実行されるのであれば,先行する部分更新演算の実行を省略することができる.各オブジェクト上で不要な演算の実行を省略することにより,各仮想マシンおよび実サーバ上で実行される演算数を削減できる.これにより,クラウド・システム全体の消費電力量の削減およびシステムのスループットの向上が可能となる.次に,多重化されたオブジェクトに対する同時実行制御方式の1つであるコーラム方式を拡張した同時実行制御方式を提案する.コーラム方式では,各トランザクションが多重化されたオブジェクトに対して演算を発行する前に演算毎に定義された数の複製(コーラム)をロックする.本研究では,各演算のコーラム選定時に定義した仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルをもとにシステム全体の消費電力量が最少となるコーラムを選定するアルゴリズムを提案する.さらに,前述した各オブジェクト上で不要な演算の実行を省略するための制御方式を提案する.次に,提案した消費電力量を考慮したコーラム選定アルゴリズムとオブジェクト上で不要な演算の実行を省略するための制御方式を実装する.
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