研究課題/領域番号 |
19K11952
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中里 秀則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30329156)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンテンツ指向ネットワーク / 情報指向ネットワーク / ICN / キャッシュ / 経路探索 / 経路キャッシュ / P2Pネットワーク / ハッシュの利用 |
研究実績の概要 |
コンテンツ指向ネットワークである NDNでは、コンテンツ要求パケット(Interestパケット)に含まれるコンテンツ名を基にして、当該コンテンツが存在するサーバまでInterestパケットを配送する。サーバはInterestパケットを受け取ると、要求されたコンテンツを含むDataパケットを作成し、そのDataパケットで、要求元までコンテンツを配送する。このとき、コンテンツの数はサーバの数にくらべても非常に大きな数になるので、コンテンツ名を基にしてInterestパケットを配送するサーバを選択し、どのように配送経路を決定するのかが大きな問題である。特にNDNでは、各ルータでコンテンツの一時記憶ができるため、サーバより近いネットワークノードでコンテンツを発見できる可能性があり、本研究開発は一時記憶を含めた経路解決をすることを目指している。
この課題を解決するために、今年度は、ネットワークトポロジの論理隣接関係のみを考慮した場合について、コンテンツ名の類似性を基にしたコンテンツの配置と探索の手法について、提案し評価を行った。まず、オリジナルのNDNにおける各ルータに存在するFIBという経路表に加えて、CacheTable (CT) というコンテンツの一時記憶とともに経路の一時記憶も提供するデータ構造を各ルータにもたせることを提案した。CTの検索は、コンテンツ名から生成したハッシュ値をキーとして行うこととし、完全一致するエントリーが無い場合にも、一致度の最も高いエントリの示す方向にInterestパケットを転送することとした。また、この転送機構を使って、追加のコンテンツ登録を行い、名前の一致度の高い経路に、コンテンツを強制的に配置する仕組みも組み込んだ。この提案により、より近いネットワークノードでコンテンツを取得できるようにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究開発の初年度としては「ノード間論理隣接関係の構築に関する研究」と題して、物理的なネットワークトポロジーを無視して、論理的なネットワークを構築できるものとし、類似性のあるコンテンツを、論理ネットワーク上の隣接ノードに配置する方法と、その論理ネットワーク上で要求コンテンツを発見する手法について研究する計画を立てており、概ね計画通りの研究を行った。
まず、ネットワークノードを構成するルータにCTを設置すること、およびCTの構成について提案を行った。CTの各エントリにはコンテンツ名、ハッシュ値、転送方向を示すインタフェース情報が含まれ、その他に一部のエントリについては、コンテンツ自体も格納される。さらに、CTを使ったコンテンツ探索のアルゴリズムを提案した。このアルゴリズムは、NDN本来のInterestパケット転送を行う前に、CTのハッシュ値を使った探索を一定の距離行うというものである。この予めの探索により、うまく行けば、本来のアルゴリズムで見つかるサーバあるいはルータよりも近いところでコンテンツを発見することができる。
これらの提案を元に、シミュレーションプログラムを作成し評価を行うところまで実施することができたが、時間的に論文発表するまでには至らなかった。これは、シミュレーションを構築する上でのベースとなるndnSIMというプログラムの構成が複雑で、シミュレーションプログラム作成しデバッグするのに時間を要したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度提案したCTおよびコンテンツ配置/経路探索アルゴリズムについて、まだ小規模なネットワークに於いて、第一段階の評価ができている状況であるので、今後、大きな規模のネットワークにおいて、追加の評価をまず実施する。その評価結果に基づき、さらなる改良が必要かどうかを検討する。アルゴリズム改良としては、現状のアルゴリズムでは、ハッシュを用いた経路探索はInterestパケットの配送に於いて一度だけ実施しているので、それを複数回、適切な場所で実施することにより、パフォーマンスを向上できる可能性がある。
初年度の研究開発計画では、ネットワークの論理トポロジと物理トポロジが一致するものとして検討を進めることとなっていた。今後、その二つのトポロジが独立で、物理トポロジ上で任意の論理トポロジを動的に構築できる場合について、検討を広げる計画である。二つのトポロジの独立性を活用することにより、既に物理的にコンテンツが配置されたネットワークノードを、論理的に隣接したノードとすることができる。これにより、コンテンツを移動することなく、トポロジ情報を変更することのみにより、よりすばやくコンテンツを発見することができるようになり、経路探索性能を向上させることができる。この手法についても次年度では検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスのために出張予定の学会が無くなったこと、およびクラウドを利用する予定だった部分を既存設備の増強によって対処し費用を削減したために差異が生じた。次年度についても出張が無くなる可能性があるため、実験のための設備増強して、評価時間の短縮のために予算を振り分ける予定である。
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