本研究では、既設インフラを活用したLAN等の閉域ネットワークへタイムセンシティブネットワーク技術を適用することによる低遅延サービスの実現において、その要素技術であるサーバ-クライアント間での簡易かつ高精度な時刻・周波数同期システム技術を確立するため、標準電波等を活用した簡易な周波数同期方式とネットワークベースの簡易な時刻同期方式を併用することによる高精度な同期方式を検討し、数値シミュレーションならびに実機を用いた実験においてその同期性能を評価するとともに、実用化の際に課題となる同期信号喪失時における発振器のホールドオーバ動作の安定運用を実現するための手法を確立することを目的とする。 これまで、ネットワーク中での遅延揺らぎの影響を考慮した時刻同期性能に関するシミュレーション評価によりその有効性を確認するとともに、ディジタル信号処理による周波数同期系の実験評価ならびに温度変動を考慮した制御によるホールドオーバ特性の事件的検証による安定動作を確認してきた。2021年度においては、まず、FPGAを用いたカウンタベースのタイミング同期ならびに1ビットDA変換器による発振器制御回路の構成について検討を行い、前者についてはGNSSモジュール出力のタイミングに同期した動作を確認し、サーバ側の時刻基準としての動作を確認するとともに、後者については低コスト発振器の周波数を1ppb以下で安定して制御できることを確認した。次に、ホールドオーバ時の動作に関して、安定動作後の周波数オフセットによって発生する時刻オフセットについて、時刻同期側からオフセットを推定し補正する方法を検討し、シミュレーションにより数時間のホールドオーバ動作においてもマイクロ秒程度に抑圧可能であることを確認した。さらに、これらの結果をまとめ、国内学会において発表した。
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