本研究の目的は、スパースな分散ネットワークでのセキュリティとトラストを推論・計算することであり、実施計画を展開させた、A. Elastic Trust Modelの展開:と、B.新たなセキュリティ環境でのトラスト解析の試みを目的とした。本年度は、最終年度であり、以下の成果を上げるとともに、今後の研究の展開について検討を加えた。 A. Blockchainの応用が多岐にわたることがわかりつつある今、新しい応用とそのトラスト解析、特にトラストが動的に拡大する(縮小はとりあえず考えない)、その拡大が人とのnegotiationによって決まる電子出版の権利管理をblockchainで行うシナリオ SUNSPOTを考え、解析を加えた。トラストの動的管理の重要性が実シナリオにおいても明らかになった。さらに、トラストを記述する形式的な手法を開発した。これはもともとblockchainを使用するシステムの解析のために使うことを想定していたが、より広いシナリオに適用できる可能性を見つけ出した。 B. IoTセキュリティを想定したリスク解析をもとに、トラストの観点からの解析を加えた。ここでは、トラストをセキュリティ境界として表現し、それが動的に拡大伸縮するシナリオの解析であった。 研究開始時に目的としたスパースな分散ネットワークが、ローカルなチェインを束ねるハイブリッドなblockchainとして実現されつつある今、そこでのトラスト解析の重要性はますます高まっている。理論的な到達点と現実的なシナリオでの解析ができたことで、さらなる展開が期待できるようになった。
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