研究課題/領域番号 |
19K11959
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三河 賢治 新潟大学, 学術情報基盤機構, 准教授 (00344838)
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研究分担者 |
田中 賢 神奈川大学, 理学部, 教授 (50272810)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パケット分類 / 従属部分グラフ / トライ |
研究実績の概要 |
令和元年度(平成31年度)で実証実験のためのIoTデバイスの計算機環境とネットワーク環境の整備を完了し、IoTデバイスに適したフィルタリング技術の核となる探索アルゴリズムの検討を行った。この検討の過程において、IoTデバイスにおいては、研究グループでこれまで開発を進めてきた分割トライに基づくフィルタリング技術よりも、むしろ探索グラフに基づくフィルタリング技術の方がCPU負荷やメモリ消費の観点から望ましいのではないかという結論に至った。令和2年度は、探索グラフに基づくフィルタリング技術のアルゴリズム開発および性能評価を中心に理論的な側面から研究を進めた。また、既存の分割トライに基づく探索アルゴリズムについてもIoTデバイスに適した実装となるよう改良を進めた。探索グラフに基づくフィルタリング技術のアルゴリズム開発では、最適化問題を解決する有力な手法の一つである分割統治法の技法を応用し、CPU負荷を低減するようなフィルタリングルールの並び順を構成するアルゴリズムを開発し、性能評価を行った。試作段階のアルゴリズムではあるが、既存の手法と比較して、計算機上のシミュレーションにより確実にCPU負荷が低減していることを確認した。また、既存の分割トライに基づく探索アルゴリズムにおいても、既存の手法(他の競合する国際研究グループ)と比較して、メモリ消費の観点から十分な改善を示すことができた。エンタープライズ用途の機器に搭載する探索アルゴリズムとしては十分なメモリ性能ではあるが、しかしながら、IoTデバイスに搭載するためには検討の余地があることも分かった。今後は、開発アルゴリズムをIoTデバイスに実装し、既存の分割トライに基づく探索アルゴリズム、競合する国際研究グループが開発する探索アルゴリズム等との比較を行い、性能評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、探索グラフに基づくフィルタリングアルゴリズムを新規に開発し、計算機上のシミュレーションによる性能評価を行った。試作段階のアルゴリズムではあるが、既存の手法と比較して、0.005パーセントから0.01パーセントではあるが、有意なCPU負荷の低減を確認できている。CPUとメモリの資源が限られたIoTデバイスに搭載した状態でも性能を維持することが期待でき、本研究のテーマである「高性能な軽量パケットフィルタ」の実現に向けて着実に成果を上げていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
開発した検索アルゴリズムはIoTデバイスへの実装を考慮して十分な処理能力をもっていると判断しているが、試作段階のアルゴリズムであり、実装コードには改良の余地がある。今後は、実装コードの改良を行い、ソフトウェア実装の処理能力の向上を目指し、現実のネットワーク環境下での性能を評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度(平成31年度)の検討に基づき、今年度は新規に探索アルゴリズムの開発を行い、計算機上のシミュレーションにより性能評価を行った。主に理論面での評価を中心に実施したため、成果発表を主体とした研究費の使用であったが、コロナ感染症対策のため、ほぼすべての成果発表がオンラインでの開催となり旅費等に見込んでいた予定額との差が生じた。次年度は、IoTデバイスを現実のネットワーク環境下で性能評価するため、評価に適したIoTデバイスおよびネットワーク機器を再検討し、購入する予定である。
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