本研究の目的は,研究代表者によって提案された楕円曲線上のMe演算や良く知られた加算による群構造,ペアリング写像,同種写像を組み合わせて利用することで,新しい楕円曲線暗号プロトコルを開発し,それら暗号プロトコルの効率的な実装法を提案することである. ペアリング写像は,IDベース暗号やグループ署名のような多くの高機能暗号の実現のために用いられるが,実装には埋め込み次数選択,楕円曲線構成,拡大体構成,Millerループ計算と最終べき計算を考慮する必要があるため実装が複雑である. 2021年度は,主にペアリング計算と,群構造による安全な楕円曲線構成に関連する楕円曲線上3次指標と4次の指標について研究した.ペアリング計算については,[1]で埋め込み次数が2^n*3や3^nに対する拡大体構成法と楕円曲線構成法を与え,[2]でSpecial TNFSという攻撃法に耐性のある埋め込み次数10,11,13,14であるペアリングの最終べき計算法を提案しかつ計算コストを評価し,[4]で埋め込み次数がk=1 (mod 6)を満たす素数の場合に適用できる効率的な最終べき計算法を提案した.指標については[3]で有限体上楕円曲線の3次の指標を,[5]で2次の指標を用いる点の位数の4の倍数性を判定する方法を提案した. 発表実績はないもののMe演算に関する研究も進展し,これまでは擬似乱数生成のみでったが,Me演算を用いてやや不完全なゼロ知識証明やディジタル署名を実現できそうである. なお,[1]~[5]は7.研究発表に記載されている研究業績に対応している.
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