研究実績の概要 |
共通鍵暗号の安全性は既存の全ての暗号解読法への耐性を網羅的に調べることで評価されるため,暗号方式の提案後に設計者が想定していない解読法が発見されて安全性が低下するケースがある.本研究課題では機械学習の一種であるDeep Learning(Deep Neural Networks, DNN)により解読法で用いられる暗号関数内の特徴量を網羅的に検出する方法を検討し,人手では発見が困難であった未知の攻撃手法や設計者が想定していない解読法を発見できる手段を確立することを目的とする. 2021年度は2020年度に実施したブロック暗号へのDNNベースの解読手法の適用に関して,より詳細な評価を加えた上で国際会議に投稿した.2020年度の研究では対象の暗号アルゴリズムの縮小版モデル(Toyモデル)を作成し,それに対する既存の攻撃(線形攻撃,差分攻撃)とDNNを用いた解読手法の性能の比較を行っていた.今年度はToyモデルの結果とフルバージョンの暗号アルゴリズムの結果の関係を評価する実験を行った.具体的には,ブロック暗号のブロックサイズを増加させてフルバージョンの暗号アルゴリズムに近づけていった結果,それぞれが同じ傾向の攻撃性能が出ていることを確認している.さらにこれらの実験結果を加えて執筆した論文を国際会議へ投稿しており,現在審査中である.また,実システム上で共通鍵暗号を使用した際の安全性について考慮するために,共通鍵暗号のシステムとしての利用方法についても検討している.
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