研究課題/領域番号 |
19K11975
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
柘植 覚 大同大学, 情報学部, 教授 (00325250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 話者認識 / バイオメトリクス認証 / 個人認証 / 人工音声 |
研究実績の概要 |
未来に到達するIoT(Internet of Things)時代におけるセキュリティ強化として生体情報を用いた個人認証が注目されている。特に、音声による個人認証(話者認識)は利便性が高く有効な個人認証方法の一つであると言える。しかし、音声合成技術の飛躍的な進歩により人工音声による話者認識器詐称が危惧されている。本研究では、人工音声による話者認識機器詐称の対策手法に関し研究を進める。申請期間内に日本語の人工音声コーパスを作成し申請期間終了時に一般公開する。人工音声による話者認識器詐称を対策方法の高精度化を進めるため、人工音声と実音声の相違点を明確にするとともに、人工音声による話者認識器詐称の対策手法に関して、特徴量空間の観点および判別モデルの観点で研究を進め、高精度な詐称防止方法を確立させる。 2020年度までに日本音響学会により構築された「新聞記事読み上げ音声コーパス (JNAS)」を用いた「人工音声コーパス」の構築方法および音声データを確立し、構築したコーパスを用いた人工音声に対するi-vectorを用いた話者認識実験を実施した。実験結果より、人工音声がi-vectorを用いた話者認識器を高確率で詐称することが可能であることを明確にした。 2021年度では、近年、話者認識器の主流として用いられている深層学習を用いたResNetを基盤とした話者認識器を構築し、i-vectorの時と同様にJNASを用いた人工音声に対する話者認識実験を実施した。ResNetを基盤とした話者認識器は、i-vectorを基盤とする話者認識器と比較し、実音声に対する話者認識精度は若干低下したが、人工音声による詐称を軽減することができることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度、2020年度において、日本音響学会により構築された「新聞記事読み上げ音声コーパス」に対し、声質変換方式である「統計的声質変換方式」およびテキスト音声合成方式である「隠れマルコフモデルに基づく統計的パラメトリック音声合成方式」を用い人工音声コーパスを構築する予定であったが、人工音声作成に適した話者グループ、話者数、発声などの検討に時間がかかったうえ、「統計的声質変換方式」、「隠れマルコフモデルに基づく統計的パラメトリック音声合成方式」以外の人工音声作成法を先に検討したため、予定した全人工音声データの作成に至らなかった。これらの遅れにより人工音声作成手法を用いた人工音声作成が遅れ、2021年度は2019年度、2020年度の遅れが挽回できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年度までに作成した人工音声データベースを用いた高精度な人工音声・実音声識別手法および人工音声が含まれる場合においても頑健な話者認識が可能な手法の検討を行う。2021年度にベースラインとなる、深層学習(ResNet)に基づく話者認識器の評価が実施できたため、2022年度において、人工音声に対する詐称に頑健な話者認識器の検討を行う。 2021年度において、高速な計算機を購入したため、ResNetの評価関数に複数の深層距離学習を組み合わせることにより、人工音声・実音声識別に有効な距離空間を検討するとともに、人工音声が詐称データとして使用された場合においても、本人と認識しない話者認識器を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度以降に次年度繰越が生じたものを2021年度で使用不可能であったため、2022年度に繰越が生じた。また、2019年度、2020年度、2021年度ともに新型コロナウイルスが蔓延したため、国際会議出席などがままならず、旅費に充てていた額が使用できなかった。
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