現在、IoT (Internet of Things) の進展に伴う大量のデータ送信に対応するため、一次処理をセンサ近くに設置された端末であるフォグノードで実行し、サーバには処理結果のみを転送するフォグコンピューティングが活用されている。本研究ではウェアラブルカメラなどで自動撮影した動画から情報を自動収集するための、フォグコンピューティング基盤に関する方式を実装、評価した。 2019年度は、第一に、フォグノードで発生した一次処理結果の変更を、時制データベースの概念を用いて効率的にクラウドサーバに反映できることを示した。第二に、動画の差分情報を一次処理により生成することで、対象を見ている区間を判別し、処理対象を抽出することが可能であることを示した。第三に、例えば時間の推移(昼間と夜間)や天候などにより画像に差異を抑止するため、敵対的生成ネットワーク(GAN)の一種であるCycle-GANを適用して画像を変換する方式を着想、対象の認識精度の改善が可能であることを示した。2020年度は、上記の成果を応用し、工場の在庫管理を対象に以下の2つの研究を行った。第一は、工場内の移動や作業、すなわち在庫保管エリアへの入室や、在庫棚、対象部品の自動判別であり、上記の区間の画像から深層学習を活用して判別できることを示した。第二は、この対象部品が小さな場合にも判別精度を維持する方式であり、ビデオのフレーム間のオプティカルフローを活用し、自動的に対象の領域を抽出できることを示した。 2021年度は、上記の成果を踏まえて、Cycle-GANを活用した方式を研究した。第一に環境の影響を受けないCG画像で深層学習のモデルを訓練し、実画像をCG画像に変換して使用することで、判別精度の維持が可能であることを示した。第二に、密集した小さな対象からも輪郭を自動生成し、これにより物体検出が可能であることを示した。
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