固体表面に微細構造を付加することで,従来にない新しい機能や高い表面性能(たとえば,超撥水性)を実現できることが知られている.しかしながら,このよ うな表面機能の発現機構や効率,堅牢性については未解明な点が残っている.したがって,微細構造の付加による表面機能の高度化・実用化には,微細構造内外の流動・伝熱・気液界面運動の総合的な振る舞いとしての濡れ現象を解明する必要がある.本研究では,大規模並列計算技術を活用することで,流動・伝熱・気 液界面挙動の相互干渉による非定常マルチスケール・マルチフィジクス現象に対する直接数値シミュレーションを実現し,微細構造表面上の濡れ現象を機構論的 に解明するとともに,微細構造の形状・寸法・配置に関するパラメトリック解析を実施し,表面機能の発現や高度化に必要な微細構造の設計要件を明らかにする. R5年度は,主に,巨視的な接触線モデルである接触線摩擦モデルの検証を実施した.具体的には,壁面に衝突する液滴のシミュレーションを行い,結果を実験や他の数値シミュレーションの結果と比較することで,精度やモデルパラメータの影響について調査した.また,前年度に引き続き,Cassie-Wenzel状態間の転移過程に関するパラメータスタディを実施し,転移現象の起こる条件について調査した. 本研究では,様々な微細構造における液滴の挙動に対して数値シミュレーションを実施し,実験と比較することで,微細構造に起因する複雑な現象が再現できることを確認した.また,巨視的な接触線モデルについては,モデルパラメータを調整すれば,実験をよく再現できることを確認した.
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