研究課題/領域番号 |
19K12003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 祐介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10403172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形ダイナミクス / フォノン / 非線形局在モード |
研究実績の概要 |
本研究課題を実施するにあたって基本となる,MD法と周期解探索アルゴリズム、安定性解析,摂動解析などの非線形動力学解析手法とを結合した材料内の非線形動力学解析システムを構築した。具体的には汎用分子動力学ソフトLAMMPSと2次元,3次元の結晶について原子ダイナミクスについてニュートンラフソン法を用いて,静止型非線形局在モードの解を探索した.結晶構造の対称性と,静止型非線形局在モードの構造についての解析を実施した. 探索によって得られた静止型非線形局在モードに安定性解析で得られた不安定方向の摂動を加えることにより,移動型非線形局在モードが生成されることを確認した.反復法による厳密な数値解を得るために,有限の寿命を持つ移動型非線形局在モードについてその特性を解析した.移動型非線形局在モードの軌道が揺らいでいることから,局在モードに対して実効的なポテンシャル障壁が存在していることを明らかにした.移動型非線形局在モードの探索は完全な収束は得られないものの,一定の距離を移動する解を構成するすることは出来た. 非線形局在モードの移動性の基本的性質を明らかにするために,数理モデルであるPairwise Interaction Symmetric Lattice (PISL)とFermi-Pasta-Ulam (FPU) β格子において非線形局在モードとフォノンモードの相互作用を解析した.FPU-β格子ではフォノンモードが非線形局在モードに対する摂動として作用して移動型非線形局在モードが生成される.相互作用ポテンシャルの対称性が高いPISLでは適切な初期条件では非線形局在モードが滑らかな移動性を示す.しかし,フォノンモードと非線形局在モードは相互作用せず,非線形局在モードが移動を開始しないことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で予定していた研究をほぼ実施できた.分子動力学法と反復法を結合した基本的な周期解探索コードを構築しその動作を確認した.ただし,ニュートンラフソン法を用いた移動型非線形局在モードの数値探索には大きな計算コストがかかるため,数値探索法の工夫が必要である.また数理モデルにおける非線形局在モードの移動性に関する基本的な知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
(1)周期解探索コードの高速化 結晶内の移動型非線形局在モードの厳密な数値解の探索は大きな計算コストがかかると予測される.そのため,より精度の高い初期試行解の構成,GMRES法などの反復法の実装による周期解探索コードの改良を目指す. (2)非線形性がフォノンモードに与える影響の解析 初年度の解析コードおよび(1)による改良を経て,フォノンモードを振幅をパラメータとして延長して解を探索することにより,非線形効果を考慮したフォノンモードの特性を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初初年度に予定していた計算機の導入を次年度に持ち越したため.次年度の予算と合わせて計算機の導入を計画する.
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