研究課題/領域番号 |
19K12004
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
丹治 裕一 香川大学, 創造工学部, 教授 (10306988)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハイパフォーマンスコンピューティング / シミュレーション工学 / 医用工学 / 生理学 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,固有直交分解を用いた非線形モデル低次元化について,有効性の検証を行った。研究計画では,CT画像の再構成に用いられる連続時間システムに対して固有直交分解を適用することになっていた。そこで,実際に本システムに固有直交分解を適用した所,1万次元の原システムを10次元程度の低次元化システムで表現できることが分かった。また,次元数の大幅な削減により,1/1000程度の計算時間で画像再構成が可能となった。一方,CT画像の再構成を行う連続時間システムでは,非線形性は正値の拘束を与えるために考慮されている。従って,低次元化後も近似された解ベクトルは正値を保存できることが望ましい。そこで,低次元化モデルに対する理論的な考察を行い,固有直交分解を用いた非線形低次元化では,正値の拘束を保存できることが分かった。それゆえ,本手法は安定性を保証したモデル低次元化手法と言える。 CT画像再構成の能力を向上させるには,正値の拘束のみでは不十分であり,解ベクトルは境界値として拘束される必要がある。そこで,低次元化モデルを導入する前に原システムの性質を把握して置く必要があり,境界拘束を与えた非線形連続時間システムの理論的な解析及び数値解析を行った。その結果,良好な画像再構成が行えることが分かった。これは非常に有益な結果であり,学術論文を現在,作成中である。来年度以降,本年度検討を行ったモデル低次元化手法を,この非線形連続時間システムに適用して数値評価を行うと共に,理論的な側面についてもその性質を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では弱非線形な場合のモデル低次元化を実施し,2020 年度後半から強非線形な場合のモデル低次元化を検討する予定であった。しかしながら,本年度は,強非線形な場合のモデル低次元化手法である固有直交分解を用いた方法について,大きな進展が得られる可能性があったため,これを集中的に実施した。それゆえ,遅れているとも進んでいるともいえない状況であり,区分としては,「やや遅れている。」を選んだ。次年度以降は,当初の計画に戻り,研究計画の遂行に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,令和元年の実施項目として以下を挙げていた。 【弱非線形システム】非線形システムを多次元テイラー展開すると,解のクローネッカ積に関する無限次元の微分代数方程式が得られる。この応答をボルテラ級数で仮定すると,解は多次元ラプラス変換によって表すことができる。さらに,変数変換を行うことで,複数の線形時不変システムが得られる。そこで,本研究では,各線形時不変システムに対して,研究代表者が提案した適応型モデル低次元化を適用する。 令和2年度では,上記の非線形モデル低次元化手法の開発を行う。また,令和元年度に,固有直交分解アルゴリズムの開発とCT画像再構成における境界拘束をもった連続時間システムの提案を行った。そこで,このシステムに固有直行分解を用いたモデル低次元化アルゴリズムを適用して,その効果について評価を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機環境の導入を行う予定であったが,実施項目を変更したため次年度以降に導入を行うことにした。そのため,残額が生じた.また,次年度以降で国際会議における成果発表を予定している。
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