研究課題/領域番号 |
19K12005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安倍 賢一 九州大学, 工学研究院, 教授 (20315104)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計算力学 / 乱流モデル / LES / RANS / ハイブリッドモデル |
研究実績の概要 |
今年度の研究計画に従い,まず最初に基本的なチャネル乱流に対して極めて高いRe数を対象とした計算を種々の乱流モデルの組み合わせについて実施してデータの蓄積を行った.具体的には,(1)純粋なLESと標準的な壁モデルの組合わせ,(2)等方性渦粘性表現のLES/RANSハイブリッドモデルと標準的な壁モデルの組合わせ,(3)非等方LES/RANSハイブリッドモデルと最新の壁モデルの組合わせ,についてチャネル乱流の計算を実施し,得られたデータを統計処理して比較・検討した. まず,純粋なLESと標準的な壁モデルの組合わせでは,極めて高いRe数の壁乱流において予測性能が著しく低下することが明らかとなった.これにより,壁面隣接セルの流れ方向とスパン方向の格子解像度が極めて粗い(最大の乱流構造すら改造できない)状況では,純粋なLESは適切に実施できないことが改めて確認された.一方,LES/RANSハイブリッドモデルと標準的な壁モデルの組合わせについては,少なくともはく離を伴わない壁乱流においては適切な摩擦応力と対数速度分布に近い平均速度分布が得られることがわかった.これにより,LES/RANSハイブリッドモデルの有用性が明らかとなった. しかしながら,等方性渦粘性表現のLES/RANSハイブリッドモデルを用いた場合は,LESとRANSの接続領域で平均速度分布の不自然な折れ曲がりが発生することが確認された.この傾向は,よりレイノルズ数の低い流れに対して非滑り条件を適用した際にもみられたことから,等方性LES/RANSハイブリッドモデルが有する性質であると考えらえる.これに対して,非等方表現を用いたLES/RANSハイブリッドモデルの計算結果では,この不自然な折れ曲がりが大幅に改善されており,壁モデルと組み合わせても有効であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りの計算が実施され,今後の解析に資するデータが得られた.また,得られた結果を国際会議や論文執筆につなげることができ,研究活動としては概ね順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
得られた計算結果を詳細に検討し,より高精度の乱流モデル開発へとつなげていくことを目指す.また,当初の目的である「極めて高いRe数」を対象とする場合,壁から離れた領域での乱流モデルの性能も重要となることから,今後は格子解像度の問題が大きい壁面近傍のみならず壁から離れた領域での乱流モデルのパフォーマンスにも注目して研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当該年度においては,本研究を進めるために最も重要な大規模計算を行うためのスーパーコンピュータの使用料に関して,当初予定した程の経費が必要とならなかったために,結果的に繰越金が生じた. (使用計画)今回生じた繰越金については,次年度予算とあわせて今後予定しているより大規模な計算を実施するために必要となるスーパーコンピュータの使用料に充てる予定である.
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