本研究課題を通して,本担当者が開発した1方程式非等方SGSモデルと1方程式非線形RANSモデルを組み合わせた「非等方LES/RANSハイブリッドモデル」が極めて高いレイノルズ数の流れ場においても高い有用性を持つことが示された. 代表的なチャネル乱流に対しては,バルクレイノルズ数が50億を超えるテストケースについても,一般的な壁モデルと組み合わせることにより,標準的な計算領域に対して1千万点程度の格子点数で高精度予測を維持できることが確認された.なお,その際に等方性モデルではLESとRANSの接続部においてダブルバッファ(速度分布の段差)が見られたことから,レイノルズ数に関わらず広い計算条件に対して非等方項の重要性が確認された.ちなみに,本テストケース(摩擦速度ベースでRe_tau=6x10**7)に対して,第1格子点の壁からの距離(y+=300)を維持して階層型直交格子法を適用すると,壁面1層目だけで8千億点(上下壁で1.6兆点)が必要であり,総格子点数は本手法の10万倍を超えることから,本非等方LES/RANSハイブリッドモデルの有用性が理解できる. 以上を鑑み,階層型直交格子法を極めて高いレイノルズ数の流れ場に適用することは現時点では難しいと判断し,本非等方LES/RANSハイブリッドモデルを可能な限り高アスペクト比の格子に対応できるように性能改善することを目指した.そこで,本非等方LES/RANSハイブリッドモデルのさらなる高精度化を図るために,バックステップ乱流を対象として,ステップ直後のせん断層における高アスペクト比の格子に対するSGSモデルのあるべき姿について詳細な検討を行った.その結果,SGSモデルのフィルター幅として従来から用いられてきたセル体積の三乗根は高アスペクト比の格子では適切でないことがわかり,将来の性能改善に向けて非常に有用な知見が得られた.
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