研究実績の概要 |
本研究はデジタル画像相関法(Digital ImageCorrelation, DIC)による変位計測データを利用した有限要素解析モデルのデータ同化法の有効性について検討したものである.2019年度は有限要素解析モデルの要素の剛性パラメータをモデルパラメータとしたアンサンブルカルマンフィルタによる逐次データ同化のコード開発を行い,DICを想定した疑似的な計測データを用いて検証実験を行った.損傷を有する板材を対象に,損傷箇所を逐次データ同化で得られる推定値から効果的に評価可能であることを示した.2020年度は強制変位を受ける有限要素解析モデルの要素の剛性比をモデルパラメータとした拡張カルマンフィルタによる逐次データ同化のコード開発を行い,疑似計測データ及びDICの実データを用いた検証実験を行った.実験は2019年度と同様のモデルを対象にし,損傷箇所を剛性比の低減によって効果的に評価可能であることを示した.2021年度はより広範な問題を検証するため,曲げを受ける損傷板材に対して逐次データ同化を適用し損傷検出を試みたが,計測時の振動の影響で適切な推定を行うことができなかった.また,しわを生じる膜面をDICで計測し,膜面解析モデルに逐次データ同化を適用することを考えたが,適切なモデルパラメータの設定が容易でなく検討が必要であった.2022年度は基準点との差分変位を計測量とした逐次データ同化を考え,カメラの振動などの対象に共通となる振動成分を除去してモデルパラメータを推定する方法を提示した.引張を受ける板材のヤング率推定問題を考え,疑似計測データ及びDICの実データを用いた検証実験により有効性を示した.また膜面解析モデルについて,張力場モデルの許容圧縮応力と変位計測の関係について詳細に調査を行い,許容圧縮応力が解析モデルの特性を代表するモデルパラメータとして適切なことを明らかにした.
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