研究課題/領域番号 |
19K12018
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
工藤 博章 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (70283421)
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研究分担者 |
山田 光穗 東海大学, 情報通信学部, 教授 (60366086)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚情報処理 / オクルージョン / 視覚経路 / 色覚 / モデル / 映像 / 生体信号 / 知覚情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,人の網膜の解像能力を超える高精細画像を用いて輻輳眼球運動と水晶体の屈折度を測定することにより,オクルージョン知覚機構の性質を考慮して3次元画像を再現する手法の提案と,脳内の複数の視覚過程における対応点検出メカニズムを,非侵襲に解明を行うことを目的としている. まず,人の網膜と同等の解像度を実現できる2D映像を用いて,オクルージョン知覚時の生体信号と臨場感や実物感などの知覚に関する評価を行うことを計画した.これに対して,高精細画像を用いて,生体信号を計測するためのシステムの構築を進めた.一枚の高精細映像の提示系の装置に加えて,3D提示をする上で,複数の生体信号(眼球運動と水晶体の屈折)の記録装置での動作検証を実施した.視差付の映像の組を表示させ,裸眼立体視による融合は可能であったが,より負担の少ない刺激提示方法の検討を行った.偏光フィルタとハーフミラーの設置による2台の映像提示装置を用いた立体像の観察を計画した.この環境で生体信号の計測での干渉があり,また,左右像のクロストークの解決を行うための設計を行っている.同時に,生体信号記録のための環境の整備を進めている.ハーフミラーを用いた映像での実験を行い,眼球運動の計測を行った.また,今年度,生体信号記録装置の導入を行ない,刺激提示と記録装置の連動を考慮したソフトウェアでの実装を行い,記録システムを構築した.実施例では脈波の記録を行なった. また,オクルージョンの手がかりとなる映像刺激の色特性,すなわち,錐体からの信号の情報伝達経路に着目した実験課題を設定し,刺激パターンのサイズの違いから,青色に関わるオクルージョンの刺激を提示した実験から,青色単独に関連した経路での寄与が低いことが示唆される結果を得た.これは,別の側面での知覚現象である両眼視野闘争でみられる知見を支持する結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り,提示刺激と生体信号の測定を行う機器の整備を進めた.裸眼立体視は可能であるが,研究の進行に伴う3D提示については検討の必要性があり,これも行なった.刺激提示と生体信号の記録に関しては,眼球運動計測と,脈波の計測の記録を行うことを行なった.これに関して,1件報告を行った.また,ハーフミラー越しの映像は,奥行きの異なる状況であり,オクルージョンを生じさせる提示の一例であり.この環境での計測を行った.眼球運動と水晶体の屈折度の同時計測装置と3D映像表示については,次年度とで進める予定である. また,オクルージョンの手がかりとなる映像刺激の色特性に着目した実験では,従来の実験課題に対しての結果では,他の色覚に関する視覚情報処理経路の関与も仮定されるが,今年度,刺激のサイズに着目して行った実験で,青色単独に関連した経路での寄与が低いことが示唆される結果を得ることができ,これに関して,1件報告を行った.
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今後の研究の推進方策 |
おおむね予定通りに計画が進んでおり,3D映像刺激提示装置と計測機器の整備を進めながら,映像提示による実験を進める.ハーフミラーでの奥行きの異なる指標に対する実験を試行しているが,高精細映像を用いた2D映像刺激に関する実験についての計測は,3D映像との実験の比較として,同時に取り組んでいく. 当初の計画にしたがって,両眼視差映像による3D映像においてオクルージョンの存在が奥行き知覚に与える影響を探るため,視差映像間で生じるオクルージョンのON,OFF制御を行い,オクルージョンが与える影響を生体信号とその時に生じる知覚から分析する.今年度,色特性に着目した実験で,提示刺激のサイズ等のパラメータを検討することで,知見が得られたが,このようなパラメータを考慮することで実験を実施していく.また,人のオクルージョン領域の処理を再現するモデルを構築する上で,機械学習による方策のためのデータ取得も検討する. また,等輝度知覚度条件におけるオクルージョン知覚の分析について実施する.これまでに,赤と緑の組合せによる等輝度知覚下での眼球運動を分析し,パルボ系の機能の解析を行っている.今年度,黄と青の組合せによる等輝度知覚条件でのオクルージョン知覚下での眼球運動を分析し,特に,刺激のサイズに注目することで,色に関連した経路(顆粒細胞の寄与する経路)での寄与が低いことが示唆される結果が得られている.この結果の検討を進めていくとともに,顆粒細胞の機能について明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進捗し予算に残額が生じた.また,学会参加に際して,現地開催が主催者による中止とされたことによる予算の残額も生じた. 次年度では,3D提示刺激装置を用いた実験が予定されており,この実験環境の構築に必要な備品費,消耗品費と,実験実施に関して謝金,学会参加費への活用のため,この予算を使用することとした.
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