研究課題/領域番号 |
19K12021
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
西口 正之 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (90756636)
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研究分担者 |
渡辺 貫治 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20452998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 空間的マスキング効果 / マスキング閾値 / マスカ― / マスキー / マスキングスレッショルド |
研究実績の概要 |
3次元空間上に配置された音源相互のマスキング効果を確認するために、直径1.5mの円周上に45°間隔で配置されたスピーカーから、マスカ―、マスキー音を出して、それらの間のマスキング効果を確認した。その結果、一般にマスキーの方位がマスカ―から遠ざかるほどマスキング閾値が低下することが確認された。一方、マスカ―に対して前頭面に関して対称の位置にあるマスキーに対してはマスキング閾値が、その周辺のそれよりも上昇することが確認された。例えば、受聴者の真正面の音源によって、真後ろの音がその周辺の音よりも強くマスクされるという現象である。 この現象について、マスカ―を2個のスピーカーによるファントム音像で生成した場合にも、同様の現象が起きることを確認した。例えば、前方左右に置いたスピーカーによって受聴者の真正面に生成した音像によって、受聴者の真後ろの音がマスクされるという現象である。他の位置に生成したファントム音像についても、マスカ―音像の前頭面に関する対称の位置にあるマスキーが強くマスクされることを確認した。 さらに、マスカ―をスピーカー再生とし、マスキーの再生に耳穴開放型(外音取り込み型)のヘッドフォンを用いて、HRTF(頭部伝達関数)によって受聴者を中心とする半径1.5mの周上に仮想音源によるマスキーを置いた場合も、冒頭に示した、マスキング閾値の前頭面に関する対称性があることを確認した。ただしこの場合は、マスカ―マスキーともにスピーカー再生の場合に比べて、全般的に閾値が下がる傾向があることを確認した。これは、HRTFによって生成するマスキーの仮想音源位置が、意図した位置から多少ずれることが主な原因であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間的なマスキング効果に関する最も基本となるデータを取得することが出来た。また、空間的マスキング効果に、前頭面に関する対称性があることを見出したのは大きな成果である。また、マスカ―の音像位置による空間的マスキング効果の変化を、ファントム音像によって確認した。音像位置とマスキング閾値の関係にも上記の前頭面に関する対称性があることを確認できた。更に、頭部伝達関数(HRTF)を用いてヘッドフォン再生で生成した仮想音源マスキーを用いた場合にも、実音源同士の時と同様に、前頭面に関する対称性があることを確認できた。これらの結果はいずれも、空間的マスキング効果を符号化に用いる際には、再生側のスピーカーから出力される信号ではなく、音源オブジェクトの位置関係を考慮して符号化を行う必要があることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
音源の方位によって空間的マスキング効果がどのように働くのかについては、仮想音源の場合を含め、概ねデータがとれたが、受聴者から音源までの奥行方向の距離によってどのような影響を受けるのかについては未検討であるため、今後実験を進めて行く予定である。 また、継時マスキングの効果が、空間的に異なる位置に配置されたマスカ―、マスキー間でどのように働くのか、その時定数はどの程度なのかを調べる。更に、音源位置の動的な変化に対して空間的マスキング効果がどのように変化するのか、マスカ―とマスキーの相対的位置関係の変化に対して、マスキング効果がどの程度のスピードで追従して行くのかを調査する。これらの知見は、空間的マスキング効果を多チャンネルオーディオの符号化伝送に応用する際に、符号化器のダイナミックビットアロケーションに要求される追従速度にかかわってくるものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に参加を予定していた国際会議および国内会議が、Covid-19のために全てバーチャル開催となり、本予算からの出費がなくなった。また、実験機材については、研究室内の、他の予算の実験機材と共有することで、本予算からの出費が抑えられた。 2021年度ぶんとして繰り越された予算は、本研究にかかわる大学院生の国際会議での発表の旅費に充てる予定である。また計算機の新規購入も予定している。
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