研究課題/領域番号 |
19K12022
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
入部 百合絵 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (40397500)
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研究分担者 |
北岡 教英 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10333501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知症傾向検出 / 高齢者 / 対話データベース |
研究実績の概要 |
80歳以上を超える超高齢者を中心に大規模な対話データベースを構築するとともに,対話音声から認知症傾向を抽出することを提案する.認知症の治療法は未だ確立されていないが,早期発見により進行を遅らせることができるため,厚生労働省が掲げた新オレンジプランにおいても認知症の早期発見は大きな柱の一つとなっている.これまでにも数多くの認知症検査は開発されてきたが,早期発見のためには精神的・肉体的負担をかけずに日常の中から迅速かつ的確に診断できることが望ましい. 一方,認知症の症状は主に記憶障害,アパシー,言語障害,構音障害などであるが,対話音声には発話の抑揚・リズム・テンポなどの韻律情報や話した内容に関わる言語情報が含まれている.これらはいずれも認知症の症状に表れる情報を多く含んでおり,対話音声の言語的・音響的情報は認知症傾向の検出に有用である.以上のように,本研究では日常会話の中から効率的に検出可能な認知症判断手法を提案する. 2019年度は85歳以上の高齢者の方を中心に,過去に収集した名古屋と徳島の高齢者施設での対話音声を整備した.加えて,四日市,鈴鹿,木更津の高齢者施設において,30名の高齢者の方との対話音声を収録した.音声内容は,インタビュアーと高齢者による対話音声,音響モデルを構築するための読み上げ音声である.また,認知症簡易テストHDS-R(Hasegawa’s Dementia Scale for Revised)も実施し,テスト時の音声も収録した.それら収録した音声に対し,人手によるテキストの書き起こし,構築した音響モデルからの音素アライメント抽出を実施した.これらのデータをもとに認知症傾向に関わる音響的特徴量を抽出し,分析した結果を,国際会議および国内学会にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は様々な地域に住む高齢者の方の対話音声データ収録を計画していた.2019年度までに85歳以上の高齢者の方を中心に,名古屋と徳島の高齢者施設において対話音声を収集した.加えて,四日市,鈴鹿,木更津の高齢者施設において,30名の高齢者の方との対話音声を収録した.音声内容は,インタビュアーと高齢者による対話音声,音響モデルを構築するための読み上げ音声である.また,認知症簡易テストHDS-R(Hasegawa’s Dementia Scale for Revised)も実施し,テスト時の音声も収録した.収録した音声に対し,テキストによる書き起こし,音素アライメントの抽出作業も実施した.以上のように,対話音声データの拡充と整備を行うことができたため,おおむね計画通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度までに収集した音声データを用いて,下記のことを実施する. 言語的側面における語彙量,語彙の難度,各品詞の比率の分析 認知症の症状の一つとして,日常で使う名詞が理解できなくなるというものがある.この言語流暢性に関わる症状は初期にも現れることがあり,認知症のスクリーニングには有用な症状である.そのため,①語彙量の豊富さや,用いる語彙の難度を定量化する.また,対話中に含まれる固有名詞,一般名詞の割合を数値化することで認知症傾向の有無を判別する.一方で,語彙量を示す指標で広く知られるものとして,TTR(Type Token Rate),ユールのK 特性値が挙げられる.特にTTR は先行研究にて言語能力からの認知症傾向の検出に有効であることが示唆されており,対話音声からも同様の傾向が見られるかを検証する. 一方で,認知症に罹患すると代名詞を多く用いるようになることは,症状の一つとして明らかになっている.そのため,②発話中に含まれる代名詞の割合を数値化することで,短い対話中であっても同様の傾向が現れるかを検証する.加えて,前述した言語流暢性の低下や取り繕い反応などの影響によりフィラーの割合が多くなると予想されるため,③発話中に含まれるフィラーの割合を算出し,認知症傾向との関係性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験解析用のワークステーションの購入を予定していたが,2019年度は音声データの書き起こし作業を主に実施することになったためワークステーションは不要となった.2020年度は音響モデルの構築や言語的特徴の抽出など高速な計算処理が求められるため,2020年度にワークステーションを購入する予定である.
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