研究課題/領域番号 |
19K12030
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
角所 考 関西学院大学, 理工学部, 教授 (50263322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人物行動理解 / 実世界状況認識 |
研究実績の概要 |
日常生活空間内の人や物,場所などの間には,それぞれの物体の持ち主は誰か,普段の置き場所はどこか,といった経常的な関係性が,日頃の生活を通じて醸成されている.したがって,このような空間内で,IoT機器やロボットなどが,“私のコップはどこ?” ,“これを(いつもの場所に)片付けておいて”といった生活者からの要求に応えられるには,そのような経常的関係性に関する知識を予め備えておくことが必要となる.本研究課題では,このような経常的関係性を,対象空間内で生じる人,物,場所間の関わりをカメラで継続的に観測することを通じて推定すると共に,対象空間内の人,物,場所間にまたがる様々な状況を,そのような関係性を踏まえて認識することを目的としている. これに関する今年度の主な研究成果としては,講義室内の受講者の挙動に基づく友人関係の推定や,人物行動に基づく日常生活空間の分節化などが挙げられる. 前者は,日常生活空間としてはやや特殊ながら,その一種とはみなすことができる講義室を対象として,そこで授業を受けている受講者のうち,普段から行動を共にする友人間には,類似した挙動が高い再現性を伴って共起することに注目し,これに基づいて,逆に受講者の挙動から,受講者間の友人関係を推定できる可能性を明らかにしたもので,本研究課題においては,日常生活空間内の人同士の経常的関係性の推定に関わる研究成果として位置付けられる. また,後者は,オフィス環境内の様々な場所で生じる人物姿勢のクラスタリングによって,その空間内で生じ得る代表姿勢を求めると共に,そこで生じる代表姿勢が類似した空間内の位置をさらにクラスタリングすることで,対象空間を,異なる役割を持つ場所に分節化できる可能性を明らかにしたもので,本研究課題に対しては,日常生活空間内の人-場所間の経常的関係性の推定に関わる研究成果として位置付けられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人-物-場所間の経常的関係性を,カメラによる対象空間の継続的観測を通じて推定するには,異なるフレームに現れる人や物のうち,同一の人物や同一の物体を対応付けるための人物や物体の追跡処理が必要となる.このような処理は,コンピュータビジョンの分野で古くから試みられている処理の一つであるが,本研究が対象とするような,対象空間を長期間継続的に観測して得られる画像系列においては,対象空間からの人物や物体の退場や再入場,人物や物体相互による隠れなどが数多く生じることから,安定的な追跡が難しい. このため,観測情報の中から,同一の人物や物体が関わりを持つものだけを抽出することが十分にできておらず,多様な経常的関係性を推定する試みが滞っている.
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今後の研究の推進方策 |
観測情報の中から,同一の人物や物体が関わりを持つものだけを抽出するためのアプローチとして,カメラ画像中の各人物や物体を継続的かつ安定的に追跡しようとするのではなく,対象空間の継続的な観測の結果として得られる時空間画像の各フレーム中の人物や物体を,相互の位置や速度,色等の特徴量に基づいてクラスタリングすることで,ノイズは含まれるものの,その多くが同じ人物や物体の関わるものであるような観測情報の集合を獲得するようなアプローチを試みてみることを考えている. しかしながら,2020年度は,コロナウィルスの感染防止対策のため,これまで,研究代表者自身の研究室内を観測対象とすることで獲得してきた日常生活空間の継続的な観測データを得ることが期待できない非常に厳しい状況にある.これについては,日常生活空間内で生じ得る様々な人物行動の網羅性という点では不完全ではあるが,人物行動認識の研究用に様々なWebサイトで公開されているデータセットを活用することを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
端数として1円が残ったため,次年度の研究経費に含めて使用する.
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