研究課題/領域番号 |
19K12030
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
角所 考 関西学院大学, 工学部, 教授 (50263322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人物行動理解 / 実世界状況認識 / 経常的関係性 |
研究実績の概要 |
本研究では,日常生活空間内の人や物,場所などの間に醸成されている経常的関係性を,対象空間内で生じる人,物,場所間の関わりをカメラで継続的に観測することを通じて推定すると共に,対象空間内の人,物,場所間にまたがる様々な状況を,そのような関係性を踏まえて認識することを目的としている.この目的の達成に向け,昨年度の段階では次のような問題に直面していた.すなわち,上のような目的を達するには,同一の人や物の間の関係性を長期間にわたって継続的に観測・分析するために,異なるフレーム間で同一の人や物を対応付けるための追跡処理が必要となるが,日常生活空間では,追跡対象となる人や物に対し,長時間にわたる同一位置への停留や,対象空間からの退出や再度の進入などが生じることから,それぞれの人や物の追跡を完了した上で人,物,場所間の関わりに基づいて経常的関係性を求める代わりに,人,物,場所間の関わりにはそれぞれの間の経常的関係性を反映した偏りが見られることを期待して,その下で対象の追跡と経常的関係性の推定を同時に実現するというアプローチを考案すると共に,その有効性を検証するために,日常生活空間としての研究代表者の研究室内を継続的に観測したものを実験用の観測データとして利用することを想定していたが,新型コロナウィルスの感染防止対策のため,研究室内で多数の人が過ごす状況を作ることができず,実験用観測データの収集が不可能となった.そこで本年度は,その代わりとなる観測データセットの模索・利用を試みることとなったが,その結果として,研究の方向性がやや多様化し,日常生活空間の人物行動を継続的に撮影したカラー画像と距離画像のデータセットから場所の役割を把握できる可能性や,手術室内の撮影映像から各スタッフの持ち場やそれに基づく手術状況を把握できる可能性を示唆する成果などが得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のような成果は得られたものの,本年度も新型コロナウィルスの感染拡大により,学会等での対外的な成果発表の機会には恵まれなかったため,次年度にその機会が得られることを期待して研究期間を延長し,研究費を繰り越した.
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今後の研究の推進方策 |
国際会議等,国際的な対外発表も含めた成果の取りまとめに努める予定である.また,観測データの更なる模索により,前年度から構想している対象の追跡と経常的関係性の推定についてもより充実した有効性評価を実施し,成果の取りまとめを目指したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,当初の研究計画における研究期間の最終年度であり,本来ならば研究成果の取りまとめに注力すべき年度であったにも拘わらず,前年度に引き続く新型コロナウィルス感染拡大により,特に国際会議等の国際的な対外発表を含め,十分な研究成果発表の機会に恵まれなかったことから,依然として不確実性はあるものの,次年度には新型コロナウィルスの感染状況が収束して対外発表の機会が増加することを期待し,助成金を繰り越すことを決断した.このような事情から,次年度の助成金の使途としては,主に対外発表のための旅費や学会参加費,論文印刷費等に充当することを計画しているが,新型コロナウィルスの感染状況が引き続き改善しない場合には,成果発表よりも新たな研究テーマへの展開可能性を模索することを優先し,このための予備実験等に利用する機器の購入等に充てることを考えている.
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