研究課題/領域番号 |
19K12031
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
北村 達也 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (60293594)
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研究分担者 |
真栄城 哲也 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30361356)
竹本 浩典 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (40374102)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鼻腔 / 副鼻腔 / 数値解析 / FDTD法 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きコロナ禍の影響を受けて健常者の鼻腔・副鼻腔の高品質なX線CTデータが入手できない中、副鼻腔炎等の患者のデータを用いて、鼻腔・副鼻腔の構造変化が音声の個人性に及ぼす影響に関する研究を進めている。手術前後の鼻音発声時のX線CTデータおよび音声データを収集し、音響シミュレーションに基づき検討した。内視鏡下の手術前のX線CTデータから3次元の鼻腔・副鼻腔(空気の領域)を抽出し、それに対して模擬手術を施し、それによる音声スペクトルを計算し、手術後の実際の音声のスペクトルと比較した。 音響シミュレーションは時間領域差分法(FDTD法)により行い、声門上の点音源を入力とし、その点と鼻孔の外の計測点の間の伝達特性を計算した。その結果、副鼻腔と自然孔(空気等の自然の出入り口)を開放させる模擬手術によって、実際の手術による音声スペクトルの変化に対応する結果が再現され、その変化のメカニズム、すなわち鼻腔・副鼻腔のどの部分の共鳴・反共鳴がどのように変化するのか、が明らかになった。 このほか、鼻音の音響特性に対する鼻周期や首の角度の影響を調査した。鼻周期とは、鼻腔の粘膜の状態が周期的に変化するため、数時間単位で通気状態が良い状態と悪い状態が左右の鼻腔で入れ替わることを言う。健常者を対象に1時間間隔で複数回鼻音を収録し、そのスペクトルを分析した。合わせて、首の角度が鼻腔の音響特性に及ぼす影響も調査した。その結果、鼻周期による音響特性の変化には大きな個人差があることを示した。一方、首の角度による影響には一定の傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、コロナ禍の影響によって、X線CT装置を用いた健常者の鼻腔、副鼻腔形状計測ができない状況が続いている。今年度、医師、X線CT装置メーカーの協力を得てコーンビームタイプの装置でのデータ収集も試みたが、撮像範囲に制約があることに加えて、画質が不均一なため、精密な3次元形状を抽出して音響シミュレーションに用いるのは困難であった。一方、数は少ないものの入手できた患者のX線CTデータに基づく音響シミュレーションは成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き新たなデータの入手は困難という前提に立ち、現有の鼻腔・副鼻腔データの変形に伴う鼻音の音響的変化をシミュレーションによって求め、それによって鼻腔・副鼻腔形状と鼻音との関係を明らかにするという方針に切り替え、成果を最大化するよう取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により申請時に発表、参加を計画していた国内会議、国際会議がオンライン化されたため、旅費の未使用が生じた。研究期間終了時点での残金は返却の予定である。
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