研究課題/領域番号 |
19K12037
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
藤井 雅弘 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (20366446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 位置推定 / 測域センサ / 加速度センサ / ジャイロセンサ / 全天球カメラ |
研究実績の概要 |
本研究課題では,屋内における歩行者の位置推定に関する研究を行っている.本研究課題で検討を行っているシステムの特色は,歩行者の腕部等に装着したセンサにより自己位置を推定することである.本装置は測域センサを搭載し,2次元平面において,周囲の反射物までの距離を測距可能である.従来の研究では,測域センサを姿勢の安定した位置に固定して利用するため,屋内空間の構造物の形状を有効に活用できていなかった.そこで本システムでは,歩行者の腕部に測域センサを装着し,歩行者の歩行動作にともなう腕ふりにより,時系列的に3次元形状を計測可能である.しかし,この際,測域センサの姿勢を推定する必要がある.そこで,加速度センサとジャイロセンサからなる姿勢センサを導入し,測域センサの姿勢変化を追随する手法を開発した. また,本システムでの位置推定では,屋内の構造情報に基づく3次元地図を事前に構築する必要がある.これまでの3次元地図作成では,ステレオカメラの原理に基づき,多数の画像の重ね合わせによって行われている.しかしながら,この手法は,計測に大きな時間がかなり,重ね合わせ処理による地図構築に不整合が生じる可能性がある.そこで,本研究課題では,全天球カメラでステレオカメラを構築し,1回の計測で全方位を撮像し,構造物の計測を行う新しい手法を導入した.これにより,従来手法による地図作成の処理コストを削減可能である. 位置推定アルゴリズムとしてグリッド探索アルゴリズムを導入した.このアルゴリズムでは,姿勢センサによる端末の姿勢とその位置の仮説と3次元地図による測距値の仮説と測域センサの測距値と比較し,その差が最小なる位置を推定位置とする. 測域センサと姿勢センサからなる装置を装着した歩行者による歩行実験を行い,位置推定が可能であることが示された.今後,位置推定アルゴリズムを改良し,その精度の改善を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,1年目において,測域センサの測距性能,角度分解能の詳細な検証と加速度センサとジャイロセンサによる姿勢センサを構成するアルゴリズムの構築を行った.測域センサの測距精度の距離による依存性を明らかにし,その性能限界を調査した.姿勢センサに関しては,加速度センサとジャイロセンサの計測値を四元数での姿勢表現に変換する機構を構築し,その姿勢推定性能の検証を行った.それらをシングルボードコンピュータで接続し,センサ性能を引き出すために,補間技術を開発した.更に,測域センサと全天球カメラによる3次元地図作成のための装置を開発し,計測原点の相違の問題を解決するためのキャリブレーション手法を開発した.1年目における関連する研究において,査読付き国際学会発表1件,国内学会発表7件を行い,うち,情報処理学会第82回全国大会における発表2件に対して.学生奨励賞を受賞した. 2年目において,構成する測域センサの計測可能距離を倍増し,その測距性能の向上を行った.また,活用するシングルボードコンピュータの性能向上を行い,これまでの補間技術への依存性を低減した計測を可能とした.1年目における測位結果の検証を詳細に行い,位置推定精度が劣化する状況を再現し,その原因を追究した.この検証の結果,3次元構造に対象性が強い位置では,異なる位置での評価関数の相関が高くなり,誤推定が発生することが明らかになった.そこで,歩行者の進行方向に重みづけを行う位置推定アルゴリズムを導入し,位置推定精度の改善を行った.また,3次元地図作成のための全天球カメラのステレオカメラ化し,汎用な地図作成アプリケーションソフトの開発を行った.2年目における関連する研究において,査読付き国際学会発表2件,国内学会発表5件を行った.
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今後の研究の推進方策 |
研究期間最終年度では,2年目までに構築してきた測域センサと姿勢センサによる端末での計測のさらなる高精度化を行う予定である.測域センサと姿勢センサから得られるデータは同期しておらず,この同期タイミングの調整を行うことで,測距と姿勢の関係の間に遅延の少ない計測が行えると考えられる. また,現在は,シングルボードコンピュータの性能の制約から,端末で計測された測域センサと姿勢センサのデータをオフラインで処理を行っているが,これを端末上,もしくは無線通信で伝送してリアルタイムに処理を行う方式について検討を行う予定である.現在のグリッド探索は,グリッド幅が狭くすると,位置推定精度は向上するが,その計算量が問題となる.そこで,非線形最適化アルゴリズムを導入し,推定精度を維持しながら計算量を削減する手法に取り組む.また,計測データの伝送に関して,通信速度とペイロードと要求されるデータの分解能を精査し,伝送に適したデータ構造の構築を行う. 3次元地図作成においては,ステレオカメラ化した全天球カメラは,カメラ同士が映り込みオクルージョンが発生する課題や,全天球カメラの前後の2つのカメラのつなぎ目の角度の画像が歪む課題が実験から明らかになっているので,そのキャリブレーションを行う手法を検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年に学会発表を予定しており,そのための旅費を計上していたが,学会自体の開催中止やオンライン開催等で,旅費の実費が減少したため,次年度使用額が生じた. 2020年度に生じた次年度使用額は,2021年度は,本来の使途である旅費として計上する予定である.
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