本研究課題における最終年度では,測域センサによる測距情報と,加速度とジャイロセンサによる姿勢情報を統合し,屋内三次元地図情報と整合させた位置推定システムの歩行実験装置を完成させ,各種の歩行実験を行った.測域センサを歩行者の腕部に装着し,歩行者の歩行動作にともない計測面が変化することで,測域センサ原点から屋内の壁や天井までの距離を経時的に三次元でとらえることに成功した.しかし,歩行動作にともない,計測面が屋内空間の座標系に対して回転するため,同じく歩行者腕部に装着した加速度とジャイロセンサから収集できる加速度,角速度情報を統合して,装置の姿勢を計測することで,測域センサの計測面と屋内空間の座標系を整合させる手法を確立した.測域センサと加速度,ジャイロセンサの計測情報はシングルボードコンピュータ上で集約され,歩行者の歩行にともなう距離,姿勢の変化に十分追随できる処理機構を構築した. 位置推定のためのアルゴリズムとして,従来のグリッド探索アルゴリズムだけでなく,罰金項付きグリッド探索とパーティクル探索アルゴリズムを新たに開発した.開発したアルゴリズムを評価するために,まず,数値計算シミュレーションによって,各位置推定アルゴリズムの評価を行い,パラメータと位置推定精度の定性的な評価を行った.この検証に基づき,歩行実験を様々な屋内環境において,静止状態と歩行状態の計測を行い得られたデータを開発した位置推定性アルゴリズムで処理をすることで,実時間で位置推定が可能であることが示された.数値計算実験と実装装置による歩行実験の結果から,適切なパラメータで調整されたパーティクル探索アルゴリズムを用いることで誤差1メートル以下での位置推定が可能であることが示された.
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