2020年度までに、①高輝度ディスプレイを対象とした知覚への影響量の解析、②高輝度ディスプレイを対象とした色再現モデルの構築、③ 低輝度ディスプレイを対象とした知覚への影響量の解析に取り組んだ。 ①の実績:ipRGC の受容量の違いに対して知覚がどのように変化するかについて、高輝度ディスプレイを対象としたカラーマッチング実験によって解析を行った。3000K~6000Kの4種類の照明下において、11名の被験者を用いて実験を実施した。その結果、ipRGCの吸収帯にエネルギーを有するBlueとWhiteの刺激に対して色差が大きく、また被検者間でばらつきのある安定した結果が得られた。②の実績:LMS信号は神経節細胞に到達するため、神経節細胞においてLMS信号にipRGCのバイアスがかかると仮説を立てて、ipRGCを考慮したXYZの非線形最小二乗法により補正式の導出を試みた。③の実績:より一般的なディスプレイを対象とし、各被験者の一般環境におけるデータ収集を収集した。概ね高輝度ディスプレイと同等の結果が得られたが、異なる時間帯におけるカラーマッチング実験に安定性が見られなかった。そこで、画像形成機能に影響を与えないとされるM1 ipRGCが、間接的に色知覚に影響する可能性が示唆された。 2021年度は、2021年度は、前年度までにM1 ipRGCが色知覚に影響するとされる新たな知見が得られたため、中心視と周辺視において、異なる時間帯の昼と夜に、半年以上かけて合計290セッションのカラーマッチングデータを蓄積した。データの解析の結果、中心視と周辺視のそれぞれの色知覚が概日リズムと連動している可能性、およびM1 ipRGCとNon-M1 ipRGCの双方が色知覚に影響を及ぼす可能性を示した。
|