研究課題/領域番号 |
19K12039
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
川本 一彦 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30345376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 深層マルコフモデル / 一人称行動認識 / 動画生成 |
研究実績の概要 |
本研究では,深層学習モデルと状態空間モデルを統合し,行動認識や動画生成といったコンピュータビジョン分野における動画タスクへ応用展開する.本年度の実績は次の通りである.
1.深層学習モデルと状態空間モデルを統合したモデルとして,深層マルコフモデルを導入し,カオスダイナミクスの予測に適用した.深層マルコフモデルは,状態空間モデルのシステムモデルと観測モデルを,深層ニューラルネットワークに置き換えたものである.本年度では,状態空間モデルのすべてを深層ニューラルネットワークに置き換えるのではなく,システムモデルあるいは観測モデルを既知として与えたときに,予測性能がどうなるかを評価した.両モデルは未知で代わりに深層モデルで学習させたときは,よい予測はできなかった.一方,システムモデルは深層モデルで,観測モデルは既知として与えたときは,十分によい予測が可能であることが分かった.これらの成果は,論文誌に採択されている.
2.状態空間モデルとの統合に向けて,次のコンピュータビジョンの動画タスクのための深層モデルを開発した.まず,一人称行動認識のための深層ニューラルネットワークモデルを開発した.本年度では,とくに推論・学習コストを下げるために,3次元畳み込み計算の一部分を2次元畳み込み計算に置き換えることによって,学習パラメータ数を削減することに取り組んだ.次に,敵対的生成モデル学習に基づく動画生成法を提案した.奥行を推定する機構を導入している点に新規性がある.次に,静止画像の動画化というタスクに取り組んだ.この研究では,動きのある別の動画からその動き特徴を獲得し,それを静止画像に転写する方法を提案している.この方法は,動画からのダイナミクスの獲得へ用いることが可能であり,状態空間モデルのシステムモデルの構築に利用する計画である.これらの成果は学会で発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では,深層学習モデルと状態空間モデルを統合したモデルとして深層マルコフモデルを導入し,コンピュータビジョン分野への適用ではないが,数値実験を通してその性能を評価した.研究成果は,学会発表と論文誌に採択されている.並行して,一人称行動認識,動画生成,ダイナミクススタイル変換,物体検出などのコンピュータビジョン分野での動画タスクに対して,深層ニューラルネットワークモデルを開発も進めている.それぞれ,公開されている画像データセットを用いて性能評価をし,ベースラインモデルとの比較を通して,その有効性を示している.これらの成果は,国内・国際会議等で発表している.以上,おおむね当初の計画通りに研究を進めており,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
動画像タスクに対する深層ニューラルネットワークの開発は,本研究の重要な構成要素であることから今後も引き続き進めていく.実施体制としては,複数の動画像タスク用の深層モデルを並列的に開発する体制を整える.状態空間モデルの導入は,タスクとの適性や開発進捗にあわせて柔軟に対応していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
設備として導入予定であったGPU1台の在庫がなく年度内調達が難しくなったため,次年度での購入に切り替えたため.
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