特定の害獣が忌避する人工音声の生成,および人工視覚パターンの生成を行い,実際に対象害獣(グリーンアノール)に対して効果があるか否かの実験を行った.具体的には,人工音声を含むさまざまな音声(自然音,人間の活動音声,異なる周波数からなるサイン波)と,害獣にとって天敵となる動物の画像,シルエットからなる視覚パターン,およびドットパターンに動きを付与した人工パターンを提示し,行動に変化が現れるかどうかを観察した. その結果,音声に関しては,害獣ごとに忌避する周波数が異なること,および視覚パターンに関しては,単純パターンに対して忌避行動,あるいは誘因行動が引き起こされることが明らかとなった.特に音声に関しては,単純なサイン波からなるものであっても,害獣の発する警戒音に近い周波数の音声に対しては反応が大きくなる傾向が見られた.副次的な研究成果として,グリーンアノールは音声を発しないことが示唆される実験結果も得られている. 一方,視覚パターンに対しては害獣にとって餌となるような昆虫などの動きに類似したパターンに強い反応が見られたが,同じ動きを持つ複数の格子パターンや回転や大きさの変化を伴う様なパターンに対しては無反応であった.さらに,爬虫類の天敵である鳥類の画像に対しても反応が起きないという結果を得ることができた.この結果から,対象害獣は高度な視覚能力を有するにもかかわらず,高次の認識能力がさほど高くないことを示唆している.
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