研究課題/領域番号 |
19K12047
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
馬場 雅志 広島市立大学, 情報科学研究科, 講師 (30281281)
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研究分担者 |
金田 和文 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (30185946)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 色調補正 / 海中画像 / 光の散乱・吸収 / 奥行き画像 / Structure from Motion / スペクトルレンダリング / インバースレンダリング |
研究実績の概要 |
海中で撮影された画像は、光の散乱や吸収の影響により地上で観測した場合と色合いが異なる。対象物表面の色は対象物の材質や腐食の状態を推定するために利用されるので、水中画像の色補正を行うことは重要である。本研究では、太陽光が到達しないような海底でライトを利用して撮影された画像を対象に、使用したライトの光が水中で散乱・吸収されることによって色調が変化することに対して、その現象を忠実に再現し逆の処理を施すことにより色調補正を行う。ここで、色調補正を行うためには画像中の撮影物体までの距離を表す奥行き画像が必要であるため、海中で撮影された動画像に対してStructure from Motion(SfM)により物体形状を復元し、撮影されたカメラ位置から復元した物体を投影することによって、その奥行き画像を作成する。 令和2年度は、光の散乱・吸収の影響を取り除く色調補正手法を確立するために研究を行った。水中画像の色調補正手法の検討について、2つの方向性で研究を行った。 まず、1つ目はRGBではなくスペクトルを考慮する手法である。水中では、光の散乱・吸収の影響が地上に比べてより大きくなる。また、散乱・吸収は光の波長に強く依存する。そのため、スペクトルを考慮し光の各波長成分に対して補正を行う色調補正は、RGB色空間での色調補正に比べてより厳密で精度の高い補正を行うことができると考えられる。 2つ目は、インバースレンダリングの利用である。これまでの研究では、世界の海洋をいくつかのタイプに分類したときの平均的な散乱・吸収パラメータを利用していたが、実際の海水の散乱・吸収パラメータを推定することを考えた。そこで、フリーのレンダリングソフトウエアのインバースレンダリングの機能を利用し光学的パラメータを推定することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に示したように、本研究で行う技術要素としては、以下の3つを想定している。(a)光の散乱・吸収の影響を取り除く補正手法の確立、(b)水中撮影動画像から撮影対象物体の形状を復元しカメラからの距離を表す奥行き画像を作成する手法の確立、(c)水中撮影画像の撮影対象以外のノイズの除去などの事前フィルタ処理手法の確立、である。 このうち、(b)の奥行き画像の生成に関しては、先行研究である程度の奥行き画像を得ることができていたが、令和元年度の研究において、点群の凹包を使うことにより輪郭の欠損や穴のない奥行き画像を生成することが可能となった。 (a)の補正手法については、先行研究において、世界の海水をいくつかのタイプに分類したときの光学的パラメータを求めた関連研究のデータを用いて補正を行っていたが、令和2年度の研究において、インバースレンダリングを用いた光学的パラメータの推定とスペクトルレンダリングを用いた補正手法の検討を行った。引き続き、補正手法の検討を行うが当初の計画からそれほど遅れてはいないと考えられるため、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度である令和3年度においては、個々の技術要素を統合して海中で撮影された画像の色調補正の手法を確立したいと思っている。 (a)の補正手法に関しては、引き続きインバースレンダリングによって海水の光学的パラメータを推定することと補正手法の確立を行っていく。また令和2年度に行ったスペクトルレンダリングによる補正を組み込むべきかどうか、インバースレンダリングによって散乱・吸収に関する複数の光学的パラメータを推定することが可能かを判断する必要がある。 (b)の奥行き画像の生成については、符号付き距離場などを用いた表面抽出が可能か、複数の復元形状を統合することが可能かを検討したい。 (c)のフィルタ処理に関しては、ディープニューラルネットワークを用いたノイズ除去のフィルタ処理が可能かを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、色調補正と奥行き画像生成に使用する計算機を整備するために物品購入費を計上してしたが、現有の計算機においても処理が可能であったため、購入しなかった。令和2年度も引き続き現有の計算機を利用した。 令和3年度には、より大量の画像に対して処理を行うことや、ディープニューラルネットワークによるフィルタ処理を行うことなどから、計算処理能力の高いGPUを購入し利用する予定である。
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