研究課題/領域番号 |
19K12049
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
池田 雄介 東京電機大学, 未来科学研究科, 助教 (80466333)
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研究分担者 |
及川 靖広 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333135)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 空間インパルス応答 / 複合現実技術 / 音場可視化 / 動的音場計測 / 瞬時音響インテンシティ / 等価音源 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,走査型マイクロホンアレイを用いた三次元音場計測とそれらを用いた音場の可視化技術において,位相も含めた三次元音場情報の復元を目的とし,効率的な音場計測・可視化手法を提案するものである。初年度は,申請らがこれまでに提案してきた走査型マイクロホンアレイと複合現実技術を用いた三次元音響インテンシティ可視化システムを拡張し,音源との時間同期した計測が可能なシステムを構築した。これらを用いて,瞬時音響インテンシティの可視化,および,連続的なマイクロホン走査によるインパルス応答計測/可視化システムの構築とその基礎的な検討を行った。まず,これらのシステム構築に先立ち,複合現実技術を用いたマイクロホン位置推定の精度に関して,一般的な室内において推定精度を評価し,システムの基準点から離れるにつれ推定誤差が大きくなるが,基準点周辺では概ね高い精度で推定可能なことを明らかにした。また,マイクロホンを自由に空間走査しながら計測されたインパルス応答から,グリッド上のインパルス応答を推定する手法を適用し,複合現実技術を用いて2次元平面上の音波面を動画として可視化する基礎的な実測実験を実施した。同様にして,瞬時音響インテンシティの計測・可視化実験を実施し,音源からの音伝搬や壁面による音響反射について音のエネルギーの流れの時間変化を可視化する手法を提案した。また,より効率的な音場可視化を目指した基礎的実験として,少数のマイクロホンアレイによって計測されたインパルス応答情報を用いた,等価的な点音源による空間インパルス応答モデル化/インパルス応答推定技術を三次元音場の可視化技術へと応用し,各壁面の音響反射に対応した点音源の集合ごとに波面の可視化を行うことで,特定の壁面の反射音ごとに音場の可視化が可能となる手法を提案し,実測実験によってその有効性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合現実技術を用いたマイクロホン走査型音場計測システムの構築,システム誤差としてのマイクロホン位置推定誤差の評価,音源との時間同期が可能な場合の動的なインパルス応答計測の信号処理についてある一定の目途がついており、また,等価音源を用いた空間インパルス応答のモデル化についても検討が進んだことから,当初の目標に対しておおむね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
複合現実技術を用いたマイクロホン走査型音場計測/可視化システムにおいて,位相も含めた音場の可視化手法の高精度化・高効率化を行い,さらに,定常音場の非同期計測情報における位相情報の復元と可視化を目指す。具体的には,走査型マイクロホンで計測した情報から音場情報を復元する際,より高い周波数,より高い精度で音場情報を復元するには,マイクロホンを走査する経路を増やす必要があり,必ずしも効率的ではない。また,現状では,マイクロホンの位置推定誤差の影響を低減する必要もある。そこで,移動経路上のインパルス応答から,グリッド上のインパルス応答を復元する信号処理に,マイクロホン位置推定の誤差モデルや,室形状や音源位置などに関する事前情報に基づいた音の物理モデル,既知の形状のマイクロホンアレイの導入することで,空間インパルス応答復元の高精度化・高効率化の検討を行う。特に,令和2年度は,昨年度に実施したシミュレーションによる信号処理手法の基礎的な検討に基づいて,シミュレーションを用いた信号処理手法の詳細な検討から始め,実測実験による信号処理手法の評価へと検討を進める。また,これまで2次元平面に対する音場可視化の検討を進めてきたが,より広い領域,あるいは高い空間解像度,さらに3次元音場の可視化を実現するには,元となるデータと復元される情報が大規模化し,信号処理にも多くの計算資源が必要となる。そこで,クラウド環境において必要な計算資源の準備および実験環境の構築を実施し,より広範囲の音場の可視化の検討を進める。また,複合現実技術で推定される室形状情報に基づいた数値シミュレーションを用いた音場の可視化を検討し,計測情報と連動した効率的な音場の可視化手法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入予定であった複合現実ディスプレイMicrosoft HoloLens2の発売延期に伴い,その購入費用を次年度使用に計画の変更を行ったため。
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