研究課題/領域番号 |
19K12051
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
岩野 公司 東京都市大学, メディア情報学部, 教授 (90323823)
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研究分担者 |
篠田 浩一 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (10343097)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 話者照合 / 声真似 / 成りすまし / 話者認識 / 個人認証 |
研究実績の概要 |
本研究では,声による個人認証(話者照合)の実用化に向けた,「声真似による成りすまし攻撃」の対策についての検討を進める.過去の研究において,物真似のスキルの違いによって声真似の特徴や成りすましが成功する理由に違いがあることが示唆されていることから,そのメカニズムの解明を図り,その知見に基づいて声真似攻撃に対する効果的な対策手法の提案を目指す. 2021年度は,新規に深層学習に基づく話者照合システムの構築と導入を行い,このシステムが「物真似のスキルが高い人」の声真似の攻撃をどの程度防御できるかについて,調査・分析を行った.その結果,「物真似のスキルが高い人」の声真似は,今回の深層学習ベースの話者照合システムにおいても「物真似のスキルが低い人」の声真似に比べて成りすましの成功率の大きな上昇が見られ,高い攻撃力を有することが確認された.したがって,深層学習の単純な導入のみでは声真似による詐称攻撃の対策としては不十分であることが示された. そこで,対策手法の一つとして,「声真似のスキルが高い人」の声真似を収集し,そのデータを(声真似をされた)本人の発声ではないものとして学習に利用し,話者照合システムの識別性能を高める方法が考えられる.しかし,実際に「声真似のスキルが高い人」(プロの物真似タレントなど)に依頼して大量の声真似音声を収集することは現実的ではないため,近年,高性能化が進んでいる「声質変換技術」を用いて声真似に相当する音声を人工的に生成し,それを学習に利用することを考える.2021年度は,2種類の「声質変換技術」を用いて詐称用音声の作成を行い,システムに対する攻撃力の調査を行うことで,「声真似のスキルが高い人」の声真似音声と特徴が類似しているかを調査した.その結果,1種類の声質変換器が,「声真似のスキルが高い人」の声真似攻撃と同様の特徴を有する音声を生成できることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの影響で,前年度(2020年度)の研究が順調に進まなかったことを受け,2021年度はその遅れている部分の研究から開始した.2021年度は比較的順調に研究が進んだが,2年分の計画分を完全に実施することはできず,全体の計画としてやや遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
声真似による成りすましに頑健な話者照合手法の確立に向けて,声質変換技術を用いて人工的に作成した詐称用音声を入力した場合の攻撃力の調査・分析を進める.また,その音声を利用した,成りすましに頑健な話者照合システムの構築方法の提案を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により,事業期間中に参加予定であった複数の学会の中止やオンライン開催への変更があり,旅費の使用が無くなったため.次年度,旅費を伴う学会参加等が発生すればその費用に,発生しない場合には,実験用のサーバ等の設備の増強などに充てる予定である.
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