本研究は、グラフカットによるエネルギー最小化問題を対象としている。これはコンピュータービジョンやパターン認識において広く扱われるもので、画像などの入力に対して出力がどれほど妥当であるかを図るエネルギー関数を定義して、その値がなるべく小さくなるようにパラメーターを調節することを目的としている。その解法の制約やエネルギー設計の難しさから、実用的には比較的単純なもののみにとどまっている。現在までに知られている解法では複雑なエネルギー関数の問題に対して十分実用的なレベルで解くことができるようになっており、それらは高階エネルギーと呼ばれるクラスのものである。しかし、エネルギー関数そのもの自体の設計方法については、理論的な方針がまだない。 本研究では、エネルギー関数を組織的に構成する方法の理論を構築することを最終目標としている。現在までに、画像の過分割処理を行い、その組み合わせを関数として定義する方法を提案しており、精度や計算量の面で大幅な改善がみられることが分かっている。過分割の度合いをうまく調整する必要があるのだが、これを連続的・階層的に考えると、従来研究されている尺度空間解析による画像処理との理論的な関連性を構成できる可能性が考えられ、階層的な全自動の構成手法につながるものと考えている。尺度空間解析の理論的な側面の調査として、深層学習による方法が活発に研究されてきていることも考慮する必要がある。 前年度に引き続き、理論的な解析と先行研究の調査を行っている。三次元医用画像に対する複数臓器の同時領域分割の例では、高階エネルギーの具体的な設計と同時確率分布の学習によりある程度の結果改善が見込まれたが、従来法で行われているスーパーボクセルによる高階項の緩和に焦点を当て、また関連研究で行われているいくつかの手法がどのように精度に影響しているかを調査を続ける。
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