研究課題/領域番号 |
19K12057
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
岡留 剛 関西学院大学, 理工学部, 教授 (20396120)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | センサー / 端末位置推定 / ガウス過程潜在変数モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,学習用データは用いずに,環境に配置された比較的多数の低精度センサーと,少数の高精度センサーを仮定し,それらのデータから不連続性をもつ物理量空間分布とその時間変動の高精度な推定を目指す.その遂行のための具体的な研究項目は,主に,(1) 低精度センサー値と高精度センサー値を反映させる確率的生成モデルの作成,(2) 地形や時刻といった付随した情報の事前分布への反映法,(3) 校正されていない低精度センサーの系統誤差の推定法,の3項目である. センサー値の補間を行なう前段として,有限個の地点で与えられた複数のセンサー値をもとに,領域全面におけるセンサー値の推定問題に取り組んだ.位置推定のための確率的生成モデルとして,本年度に,無限混合ガウス過程エキスパート潜在変数モデルを提案した. また,Distance Vector Hop (DV-Hop) の推定位置を利用した端末位置の事前分布を導入して,観測変数としてセンサ値を与えたもとで,事後確率最大化により各端末位置を推定した.人工データを用いた実験において,ガウス過程潜在変数モデルを用いた手法と,ホップ数のみから位置推定を行なう DV-Hop と比較して,提案手法は,絶対位置評価と相対位置評価の両方で高い精度となることを示した.さらに,物理量分布の不連続が増えても提案手法の推定精度に変化は見られず,物理量分布に不連続が存在する環境において,一定の精度で位置推定が可能であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限個の地点で与えられた複数のセンサー値をもとに,領域全面におけるセンサー値の推定問題に取り組んだ.位置推定のための確率的生成モデルとして,本年度に,無限混合ガウス過程エキスパート潜在変数モデルを提案することができた.このモデルに基づく端末位置推定手法は,絶対位置評価と相対位置評価の両方で高い精度となることを示した.さらに,物理量分布の不連続が増えても提案手法の推定精度に変化は見られず,物理量分布に不連続が存在する環境において,一定の精度で位置推定が可能であることがわかった. さらに,低精度センサーが多数配置され,高精度のセンサーが少数配置された環境下における低精度センサーの値補正に関する手法を研究開発した.その手法では,ベイズ推論を用いた事後確率最大化により,補正を行なうものである.また,センサーが置かれていないばしょについてもガウス過程回帰により補間を行なえる. 以上により,概ね計画どおりに研究が進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり,センサー値の高精度推定を目指す.とりわけ,ある広い領域における気象データなどの時空間物理量分布は,アメダスが設置されている場所と,そうでない場所でのセンサーの種類や精度が大きく異る.すなわち,安価なセンサーは多くの地点に設置されているが,アメダスは限られた場所のみに設置されている.そのような状況において,100年に一度といった異常気象を予測することは極めて重要である.そのため,異常値を時間の観点から予測する技術の重要性に鑑み,今後は,異常値予測の手法を研究することに注力する. とりわけ,近年の大雨による洪水の災害の多さに鑑み,降雨量に着目して,複数地点の観測時系列値から近い将来において,異常とみなせる降雨量を予測し警告をだせるようにしていく.
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