不連続性をもつ物理量の空間分布と,その時間変動ついて,ガウス過程回帰を基本としたベイズ推論を行なうことにより,多数の低精度センサーの値から分布の不連続地点を大まかに推定し,各連続領域において高精度センサー値を元に推定した分布により,不連続地点の再推定を行なった. さらに,データの時系列性を仮定して,時間的変動情報も利用するようにより,空間分布の時間変動をとらえるように確率的生成モデルを拡張した.具体的には,基本的に領域の各点に対し,各時刻ごとに潜在変数を導入し,隠れマルコフモデルを援用することによった.詳細には,時間をまず固定し,各センサーが置かれた地点の物理量の真値と,分布の不連続の検出,さらに,低精度センサーの系統誤差を推定することにより,構築した確率モデルとデータ,それと事前分布から,各潜在変数の事後確率をもとめることにより行なった.しかし,当初予定の低精度センサーと高精度センサーの個数比率や,配置密度,低精度センサーの系統誤差などの組み合わせを変化させて,不連続地点や系統誤差の推定精度との関係を明らかにすることまでは行なえなかった.また,地形や緯度軽度,あるいは季節や時刻といった環境に付随する情報を,事前分布として取り込むことにも挑戦したが,それらをうまく事後確率に反映させることはできなかった.これは,付随情報の種類に依存した形で,それぞれを適切に事前分布として表現しなければならなかったが,単純な表現形式では,十分に情報を取り込めなかったからと思われる.
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