本研究では、形状変化可能なディスプレイをデジタルサイネージに適用するという新たなアプローチにより、通行者がサイネージの存在を認知できない、存在は認知されていてもインタラクションが起きないといった既存のサイネージにおける問題を解決する。具体的には、ディスプレイ形状を通行者の状況に応じて動的に変化させることで、サイネージの存在への認知向上を図る。 2022年度は、当初の研究期間の延長として、2021年度に実施した研究成果に対しより詳細な検討を行った。具体的には、サイネージの前に立ち止まった通行者のインタラクションを促す効果的な形状変化デジタルサイネージの動きを解明するため、押し込む、引く、ひねるの3種類のインタラクションに着目し、2021年度に実施した評価実験での平均評価値が上位5位以内であったデジタルサイネージの動きを再評価した。平均評価値が同一の動きが存在するため、引くについては5種類、押し込む、ひねるについては6種類の動きをモックアップにより12名の実験協力者に提示した。実験協力者は提示された動きがそれぞれのインタラクションを促していると感じるかを5段階尺度を用いたシェフェの一対比較法により評価した。 一対比較の結果をもとに算出した尺度値により、速度が速く可動域が大きい動きが押し込むインタラクションを促すことが明らかになった。また、引くインタラクションにおいては、動きの速度が徐々に遅くなるといった速度変化のある動きが有効であることが示された。一方、ひねるインタラクションでは、可動域が大きい動きが有効であり、動きの速度は重視されないことが示唆された。
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