研究課題/領域番号 |
19K12065
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮城 智央 琉球大学, 病院, 助教 (80573328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 手術シミュレーション / 外科手術 / 脳神経外科 / バーチャルリアリティー / 手術戦略 / 手術訓練 / 手術教育 / リアルタイム物理変形性 |
研究実績の概要 |
脳神経外科手術において、頭蓋骨や腫瘍の切除、脳や血管が変形する操作、止血操作が必要であり、それらの手術戦略は重要である。以上について実装したリアルタイム物理変形性脳神経外科バーチャルリアリティ(VR)シミュレーション・システムの先端技術による開発を行った。 臨床症例のMRIとCTのDICOMデータからモデリングソフトにて立体メッシュモデルのFBXデータを作成した。VRのための手と頭のモーショントラッキングは市販のデバイスを使用した。リアルタイム物理変形性VRシステムは、運搬が容易なノートパソコンを用いて、プログラミングを支援する統合開発環境システムにてC♯言語にて構築した。 本システムは次が可能である。1) VR手術室内を自由に歩いて座る、2) 患者の体位や手術器具の配置などの確認、3) マクロからマイクロへのシームレスな視点変化と両眼視差調整、4) 自由な部位での開頭、5) 器具による脳や血管の変形、6) 腫瘍摘出度の自動表示、7) 血管からの出血、8) 吸引管による血腫の吸引操作、9) 電気凝固器具や血管クリップによる止血操作、10) モデルの硬度に応じた振動触覚フィードバック、11) 複数人の参加、12) IPネットワークによる遠隔参加、13) VR空間のモデルと手術操作の実寸大シミュレート、14) 重力や流体などの物理シミュレート。 本システムは13万円(VRデバイス3万円、ノートパソコン10万円)と安価に構築でき、DICOMデータから10-60分の短時間にて作成できた。上記の実装を全て実現したシステムは、世界初であり最高峰のなかの1つとして、脳神経外科VRを達成したと考えられた。本システムは、臨床症例の解剖構造、手術操作を適確にシミュレートしており、臨床応用として、脳神経外科医・医学生の手術戦略や臨床訓練に用いて好評を得ており、実用的であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究計画では、主に次の2点の目標があった。(1)すでに作成していたプロトタイプのバーチャルリアリティ(VR)・シミュレーション・システムを、医学生・研修医・専門医・実際の手術を行う執刀医などに使用してもらい、その実用性について評価し、その結果を基にシステムの評価・問題点・改良点を明らかにしていくこと。(2)本システムについての論文公表・学会発表・インターネット公表などを行い、その実用性を臨床医に広く検討してもらい、意見交換を行うこと。以上の2点の目標を予定通りの令和元年度に達成することができた上に、令和2-3年度の研究計画として予定していた脳腫瘍摘出術、脳動脈瘤クリッピング術などの様々な疾患に対するVR・シミュレーション・システムの構築と改良も達成した。また、IPネットワークを介して遠隔に複数人が本システムに参加するように改良した。 多彩な病変に対する手術シミュレーションのモデルを作成・改良していくことについては、ポリゴンメッシュの表現をparticle-based法とmarching cubes法を基にした手法など、C♯言語によるプログラミングによって令和2年度から試行し、改善中である。 英語論文はJournal of the Japan Society for Simulation Surgery(2019)に発表した。 研究代表者による学会発表は、2019年に4回、2020年に2回行った。 一般公開として、Unite Tokyo 2019にて講演し、ネットにて記事が掲載された。https://web.archive.org/web/20191001153617/https://www.4gamer.net/games/210/G021014/20190927083/
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今後の研究の推進方策 |
IPネットワークを介して遠隔的に複数人が参加可能なVR手術シミュレーション・システムを改良し、臨床応用の評価を重ねていく。 脳腫瘍摘出術、脳動脈瘤クリッピング術、その他の脳血管疾患などの多彩な病変に対する手術シミュレーションのモデルを作成・改良していくことについては、ポリゴンメッシュの表現をparticle-based法とmarching cubes法を基にした手法など、C♯言語によるプログラミングによって改善していく。 以上のように改良したシステムを、次年度以降も、医学生・研修医・専門医・実際の手術を行う執刀医などに使用してもらい、その実用性について再評価し、その結果を基にシステムの評価・問題点・改良点を繰り返し検討していく。改良したシステムについての論文公表・学会発表・インターネット公表などを行い、その実用性を臨床医にさらに広く検討してもらい、意見交換を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の根幹を成す「手術のためのリアルタイム・バーチャルリアリティ(VR)・シミュレーション・システム」の開発と構築のために、現在使用しているプロトタイプ・システムの他に追加として、さらに高性能のVRデバイスとパソコンの購入を計上していたが、プロトタイプ・システムに関してC♯言語に関するプログラミングの処理法などを改良することで、目標とするVRシステムの開発がある程度達成できたため、令和元年はそれらの購入を見合わせた。IPネットワークを介して、遠隔的に複数人が同時にVR手術シミュレーションに参加可能なシステムの構築に成功したため、令和2年度以降は複数のシステムを運営するめに、VRデバイスとパソコンを複数購入し、システムを動作させるための構築費用の必要最低額や性能を評価する必要性が生じ、また、同じ種類のVRデバイスとパソコンの機器ではなく、様々な機器を購入して機能性能を検討している。令和元年度は、英語論文を投稿するための英文校閲費、学会発表の参加費や旅費を多数計上していたが、科研費からの研究費を使用せずに、多数遂行することができたため、令和元年度の計上について減額と削減を行った。令和2年度は、コロナ感染対策として、各学会がオンライン開催となり、旅費が減額になった。令和3年度以降、追加の英語論文投稿や学会発表のために支出予定である。
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