Web会議システムにより資料を共有しながら説明するオンラインプレゼンテーションでは,発表者はカメラ機能をON にして自身の顔を表示して発表することが多い.それに対して,聴講者は聴講している環境や自身の状態が映ることに抵抗があるなどの理由から,カメラ機能をOFF にして自身の顔を表示せずに聴講することがある.その場合,発表者は聴講者の様子が見えないため,発表を聞かれている感覚がなく,発表しにくく感じてしまう可能性がある.そこで本研究では,聴講者の代役としてiRT を用いた身体引き込みエージェントを表示するWeb 会議システムを開発し,発表者と聴講者に与える効果について評価実験を行った.その結果,聴講者の代役として身体引き込みエージェントを表示することで,発表者に対して緊張感やストレス感では顔表示なしと同等の効果が示された.また,相手に発表が伝わったと感じたかにおいては顔表示がある時と同等の効果が示されるなど,本システムの有効性を確認した. この身体引き込みエージェントについて,自動生成される身体的引き込み動作のうち,うなずき動作自体は未検討であった.そのためうなずき動作そのものの違いが印象にどのような違いをもたらすのか調査し,さらに印象評価に基づいたエージェントを用いてコミュニケーション支援の効果を検討した.うなずき動作を構成する要素として,「うなずきの回数」「うなずきの深さ」「1回のうなずき動作に要する時間」の3要素に注目し,各構成要素に対してそれぞれ3 種類の設定値を設けた.このうち違和感がない動作として,19 種類のうなずき動作を評価対象として選定し,評価実験によって「親近感」,「活発さ」,「誠実さ」の3因子を抽出するとともに,うなずき動作の類型化を行った.さらにオンライン面接による評価実験を行い,システムの有効性を確認した.
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