• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

音の高精度バーチャルリアリティを実現するための個人化頭部伝達関数の生成

研究課題

研究課題/領域番号 19K12068
研究機関千葉工業大学

研究代表者

飯田 一博  千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (60458627)

研究分担者 竹本 浩典  千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (40374102)
苣木 禎史  千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (50284740)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードバーチャルリアリティ / 3次元音響 / 頭部伝達関数 / HRTF / 個人化 / 耳介 / FDTD
研究実績の概要

テーマ1(耳介形状パラメータによる個人のHRTF生成):112耳介の形状パラメータから,判別分析と重回帰分析の2つの方法による個人のHRTFの振幅スペクトルの推定方法を検討した.まず,HRTFのノッチとピークを精度よく抽出するためのHRTFモデル化方法を確立した.さらに,モデル化を施したHRTFに対して判別分析によりN1,N2が存在する周波数帯域(1/12 oct.間隔)を推定するアルゴリズムを構築した.教師データに対する弁別閾内的中率はN1, N2それぞれ76.0%, 80.0%であった.未知の耳介では65.0%, 62.1%であった.
テーマ2(HRTF生成を高精度化する耳介形状計測箇所の探索):まず,ダミーヘッド(KEMAR)の形状データを用いたFDTD法のシミュレーションにより,上半球正中面の初期HRTFには胴体からの反射波の影響はほとんど現れないことを明らかにした.さらに,耳介を左右・上下・前後および全方向に伸長してP1, P2, N1, N2の変動を検討した.その結果,全方向に伸長するとこれら周波数は伸長率の逆数倍で低下したが,どれか一方向に伸長すると低下の度合いが弱まった.伸長方向とP1, P2, N1, N2レベルの変動には一定の傾向はみられなかった.
テーマ3(耳介形状パラメータの自動計測):既存の研究設備を利用して予備実験を行った.まず,入力画像の取得方法について,ユーザビリティを考慮して自身の耳介写真を簡便に計測する方法を検討した.静止画の位置決めが困難であるため,ポータブルデバイスを上下左右に移動させ,その複数の画像内から耳介パラメータが最も精度良く推定できる手法の検討が必要であることを確認した.また,奥行きを考慮したパラメータを利用できる可能性を探るために,ポータブルデバイスの光学性能を確認するとともに複数の奥行き計測アルゴリズムを検討した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

テーマ1(耳介形状パラメータによる個人のHRTF生成):112耳介の形状パラメータから判別分析および重回帰分析によりHRTFの振幅スペクトルを推定する方法を検討した.このうち,判別分析による方法では,モデル化を行ったHRTFに対してノッチ(N1,N2)が存在する周波数帯域(1/12 oct.間隔)を推定するアルゴリズムを構築した.教師データに対する弁別閾内的中率を求め,N1, N2それぞれ76.0%, 80.0%,未知の耳介に対する弁別閾内的中率はそれぞれ65.0%,62.1%であった.さらに精度向上が必要であるものの,当初計画通りの進捗である.
テーマ2(HRTF生成を高精度化する耳介形状計測箇所の探索):上半球正中面における初期HRTFは胴体からの影響が小さく,その振幅スペクトルを耳介形状から推定することは妥当であることをシミュレーションにより確認できた.また,耳介形状を伸長させるとP1, P2, N1, N2の周波数は低下するがレベルの変動には一定の傾向が見られない,という基本的な関係も確認できた.よって,耳介各部位とHRTFの振幅スペクトルとの定量的関係をシミュレーションにより解明するための基礎を固めることができたと言える.
テーマ3(耳介形状パラメータの自動計測):耳介画像の取得方法について検討を行った.耳介正面の画像を得るには動画から複数の静止画像を生成し,最適なパラメータ抽出用の画像を選出する方法を検討する必要があることが確認できた.また,自身が直接確認できない状態での撮影となるために聴覚フィードバックを有するシステムが必要であることを確認した.民生品の性能を調査した結果,奥行き分解能は想定していた性能が得られないことが判明した.システム構築のための物品調達は年度内に行えなかったがほぼ当初の計画通りに進んでいる.

今後の研究の推進方策

テーマ1(耳介形状パラメータによる個人のHRTF生成):まず,的中率向上のため,分析データの増補(augmentation)を行う.その後,判別分析および重回帰分析を用いて構築したHRTF推定アルゴリズムにより個人のHRTFを生成し,音像定位実験により生成精度を検証する.また,テーマ2で得られた新たな耳介部位を追加して,生成アルゴリズムの改善を図る.
テーマ2(HRTF生成を高精度化する耳介形状計測箇所の探索):複数の耳介形状モデルでトポロジー的に対応する部位に微小変動を与えたときのHRTFの変動をシミュレーションによって検討することにより,HRTFの振幅スペクトルへの影響が大きい部位を探索する.また,スマートフォンなどのカメラによって耳介形状データを得ることを想定し,耳介形状の奥行き情報などを制限することがHRTFスペクトルにどのような影響を与えるかについてシミュレーションにより検討する.
テーマ3(耳介形状パラメータの自動計測):まず,耳介パラメータ抽出用画像を選定するためのシステム設計および開発を行う.ユーザビリティの観点から,画像処理のためのマーカーを耳介につけずに精度良く計測できる方法を検討する.次に2次元画像から特徴抽出するシステムの実装を行う.加えて,ポータブルデバイスの光学性能で得られる奥行き推定精度と2次元画像処理データの連係を検討する.

次年度使用額が生じた理由

既存の研究設備を活用して予備実験等を行い,自動抽出システムの設計方針決定後に発注する予定であったが,新型コロナウィルスの影響により手続きに時間を要し,次年度に繰り越すことになった.2020年度に予定通り実験用PCの購入に充てる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (4件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] 頭部伝達関数の帯域分割ノッチ・ピークモデル -分割帯域幅と音像定位精度の関係-2020

    • 著者名/発表者名
      西山織絵, 相崎翼, 飯田一博
    • 学会等名
      日本音響学会2020年春季研究発表会
  • [学会発表] 個人の頭部伝達関数のノッチ周波数binの推定2020

    • 著者名/発表者名
      飯田一博,西山織絵,相崎 翼
    • 学会等名
      日本音響学会聴覚研究会
  • [学会発表] 頭部インパルス応答の初期部分に含まれる胴体からの反射波に関する検討2019

    • 著者名/発表者名
      川村海斗,竹本浩典,苣木禎史,飯田一博
    • 学会等名
      日本音響学会2019年秋季研究発表会
  • [学会発表] 耳介形状の伸長が伝達関数に及ぼす影響の検討2019

    • 著者名/発表者名
      金子祐太郎,竹本浩典,苣木禎史,飯田一博
    • 学会等名
      日本音響学会2019年秋季研究発表会
  • [産業財産権] 頭部伝達関数生成装置、頭部伝達関数生成プログラム及び頭部伝達関数生成方法2020

    • 発明者名
      飯田一博
    • 権利者名
      飯田一博
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2020-90035

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi