本研究は、プリンタのインクジェットエンジンを利用した嗅覚ディスプレイの問題点である複雑な機構とメインテナンスの困難さの解決を図るべく、より単純なメカニズムである圧電素子を用いた液滴射出エンジンを用いた嗅覚ディスプレイを開発することを目的としている。具体的には、香料を微細な液滴を時間経過によらず定量噴霧する圧電素子を用いた噴霧エンジン、および噴霧された香料滴を気化・搬送する空気流路を一体化して卓上型嗅覚ディスプレイとして完成させることが技術課題となる。 前年度(第3年度)までに、多数の微細な孔を開けた圧電素子を用いて、香料タンクと一体化させた香料噴霧エンジンを試作し、香料滴が時間経過によらず均一に射出できることを確認し、次に、一様の速度の空気が流れる空気流路を設計し、射出された香料を空気流により気化させ嗅覚ディスプレイの射出口から射出されるようになった。しかしながら、香料の種類によっては射出された香料滴がディスプレイの底面に付着する現象が見られたため、香料滴が空気流により完全に気化することを確認するための実験を行ってきた。本年度(第4年度)は、香料滴の噴霧・気化状況観察装置を開発して、5種類の香料液と精製水を噴霧させて実験を行い、香料が付着しない空気流路の大きさを求めた。今後この結果をもとに、空気流路の設計を行って、バーチャルリアリティ(VR)や心理物理実験で利用できるような嗅覚ディスプレイを開発していく。
|