研究課題/領域番号 |
19K12077
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
深見 忠典 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70333987)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | BCI / 脳波 / 文字入力 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,脳波を用いて情報を計算機に高速に入力することであるが,それを実現するため,ここでは複数の選択肢に対応する感覚刺激により得られた脳波応答から,被験者が入力を意図する選択肢を推定するというアプローチのもと次の2点において研究を進めた。一つは呈示された選択肢に対して,入力対象である場合とない場合の脳波応答を深層学習により学習し,被験者が入力したいと考える対象を高精度で推定することであり,もう一つは,計測段階で計算機内部の各選択肢の評価値を反映した刺激呈示をリアルタイムに行うことで,入力精度の向上を図ることである。前者については,学習に膨大なデータが必要となるため,データ収集に努めた。しかし多数例のデータ収集には時間を要するため,それと並行して,深層学習の適用可能性について,臨床現場で計測された健常例に対する聴覚オドボール課題の検査データを用いて検討を行った。ここでは,標的および非標的刺激の弁別課題において,それぞれの刺激が呈示された際の応答を深層学習により学習を行い,分類を試みた。結果として19電極の脳波波形を用いた場合,分類精度は81.4%の高い値を示したが,使用する電極数を減らすに従い精度は低下した。次に,後者についてであるが,計測中に視覚刺激の呈示により出現した脳波応答に対して,我々が定義した指標を用いて,被験者が入力を意図している可能性が高いと考えられる選択肢の輝度を高く,そうでない選択肢の輝度をそれに対して低くするフィードバック刺激呈示を行った。これにより,フィードバックを行わない時に比べて,最高で12.8%精度が向上した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,深層学習を用いるため,学習に使用する十分なデータ数が必要となる。しかしながら,多数例の脳波計測には,長期に渡るデータ収集が必要となる。そこで,十分なデータを確保するため,代替手段として臨床データを用いて,深層学習による分類性能評価を行っている。一方,刺激呈示方法の検討などデータ量の制約を受けない部分については,これまでに構築したシステムを用いて順調に研究が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
深層学習を適用するにあたり,引き続き脳波計測を行い,学習データの量を増やす。これまで,多数の電極を用いることにより,頭皮上電位の空間分布情報を利用し,高い分類精度が得られたが,実際に入力インターフェイスとして利用するには,分類精度のみならず電極装着についても簡便であるのが望ましい。よって,今後はいかに高い分類精度を保ちながら、電極数を減らしていくかが課題である。また,被験者へのフィードバック刺激呈示方法については,より分類精度の高い呈示条件の発見に努めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を発表する予定で予算を確保していたが,研究結果のまとめに時間を要したため,発表を次年度に行う予定である.
|