研究課題/領域番号 |
19K12078
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
安藤 彰男 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00545668)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 音響レンダリング / 拡散音 / フィールド臨場感 / 客観評価法 |
研究実績の概要 |
響きの豊かなコンサートホールにおけるオーケストラ演奏を22.2チャネルで録音した音源を用いて、本研究で開発したレンダリング方式がどの程度本来のフィールド臨場感を保存しうるかを評価した。使用した音源には、残響音などの拡散音が多く含まれている。まず、22.2チャネルのうち、LFEチャネルを除いた22チャネル信号を、5.1チャネルのうち、同じくLFEチャネルを除いた5チャネル信号にダウンミックスした。この5チャネル信号を、さらに従来法と本方法を用いて2チャネルにダウンミックスし、主観評価実験により、5チャネルに対して、ダウンミックスした2チャネル信号がどの程度フィールド臨場感を劣化させたかを評価した。評価法としては、ITU-R BS,1534で標準化されているMUSHRA法を用いた。主観評価実験の結果、本方法の方が、従来法によりも広がり感の劣化が少ないだけでなく、両方法の間には有意差もあることが判明した。 さらに、これらの5チャネル音と、ダウンミックス2チャネル音を無響室において再生し、ダミーヘッドマイクロホンでその再生音を録音して、両耳間相関度(IACC)を計算した。その結果、IACCによる2チャネルダウンミックス音の間の評価は、主観評価実験とほぼ一致したものの、IACCでは5チャネル音の広がり感が過小評価されることが判明し、客観評価法としてのIACCの限界を明らかにした。 このほか、22.2チャネルの再生環境を構築し、次年度以降の実験に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しいレンダリング方式と従来法を、拡散音を多く含むマルチチャネル音源に適用し、主観評価実験によりレンダリング結果のフィールド臨場感を比較して、新手法の有効性を確認した。また、マルチチャネル音響における拡散音を表現する指標として、IACCの利用を試み、その有効性と限界を確認した。さらに、22.2チャネル音と、他のチャネル数で表現された音を比較するため、22.2チャネルのうち、LFEチャネルを除く22チャネル再生環境を構築した。 以上の研究進捗状況は、当初計画に沿ったものであり、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
構築した22チャネル再生環境を用いて、22チャネル信号を当初計画で考えていた8チャネル信号にレンダリングし、新しい手法を従来法と比較することにより、その有効性を確認する。また、マルチチャネル音響における拡散性の客観評価指標を得るため。IACCを改良する方法について、研究を進める。
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