研究課題/領域番号 |
19K12080
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平山 高嗣 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (10423021)
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研究分担者 |
MORALES・S Luis・Y 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (40586244) [辞退]
赤井 直紀 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (40786092)
劉 海龍 名古屋大学, 情報学研究科, 研究員 (00825739)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚的インタラクション / 高度運転支援 / 顕著性 / 視認性 / 歩行者 |
研究実績の概要 |
クルマ(運転知能)が急速に高度化し、交通事故の件数は減っているが、全件数に対する歩行者が死傷する割合は増えている。薄暮時と夜間の視界不良状況において、クルマはもとより運転者でさえも、受動的な観測による歩行者の行動予測が困難なことが一因である。歩行者の顕著性や視認性を向上させる技術が必要であり、歩行者側への支援も重要である。そこで、①次世代ヘッドライト技術を想定した適切なパターンでの光照射により顕著性と視認性を向上させることで、運転者の視覚認知を支援する技術を構築し、②歩行者に自車の接近を気づかせ、安心感を与える視覚的インタラクションの基礎研究に取り組む。検知、認識、意図伝達の3つのフェーズで構成される視覚的インタラクションを設計する。 2019年度は主に、検知フェーズにおける歩行者への点滅光照射による歩行者の見つけやすさの向上と、周辺光条件に応じて効果的な点滅周波数が異なるものの2Hzから5Hzが有効な照射光パターンであることを確認した。 2020年度は主に、認識フェーズにおけるインタラクションの設計に向けた知見を得るために、運転者の視行動をモデル化する逆強化学習を提案した。また、光照射を行わない自動運転車両(電動車いす)と歩行者のインタラクションを分析し、歩行者が走行意図を理解することが難しい場合に車両への注視時間が長くなることを明らかにした。さらには、 意図伝達フェーズの設計を先行的に取り組み、外向けヒューマンマシンインタフェースとしてディスプレイを用いて、クルマが走行意図を視覚的に歩行者に伝える実験を行い、歩行者による意図理解、走行行動予測、横断判断の促進、安全感、安心感、信頼感の向上を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、認識フェーズの設計、実装、評価として、①歩行者位置を追跡し、運転者から見た歩行者の視認性を推定し、運転者による歩行者状態の認識を光照射により支援すると同時に、②歩行者による自車認知を支援するために、どのような視覚的インタラクションが有効であるかを明らかにすることを計画した。新型コロナウイルス感染症拡大という状況で、実環境で薄暮時・夜間において安全を担保した実験実施が困難であったため、照明条件が良い環境における電動車いすの走行を優先的な研究対象として、認識フェーズにおける設計に向けた運転者および歩行者の視行動についての基礎的知見を得た。また、2021年度に計画している意図伝達フェーズの設計に先行して、そのフェーズの重要性を示す実験結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は主に、意図伝達フェーズの設計、実装、評価を行う。意図伝達フェーズは、歩行者行動予測と運転操作予測に基づいて衝突リスクと操作介入を判断し、経路計画を運転者と歩行者に可視化により伝達するフェーズである。運転者および歩行者に交通支援の意図を伝達するために、いつどのような視覚的インタラクションを行うことが有効であるかを明らかにする。 上記のための実験は、ドライビングシミュレータとヘッドマウントディスプレイを用いて行う計画であったが、薄暮時・夜間における光照射の再現性が、特に歩行者側の視点において未だ不十分である。一方で、実環境で薄暮時・夜間において安全を担保した上で、自動車と歩行者の視覚的インタラクションを試行することは難しい課題である。そこで、2020年度に引き続き、電動車いすと歩行者のインタラクションを優先的な研究対象とする。また、光照射以外での視覚的インタラクションの設計を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大により、学会等がオンラインで開催されたため、旅費が不要となった。また、既存の実験用機器を用いた実験を行ったため、データ計測とデータ処理のために計上していた経費分が2021年度に繰り越される形となる。 (使用計画)2021年度は、電動車いすにプロジェクタやディスプレイを設置し、歩行者とのインタラクションを計測する被験者実験を実施する。データ処理環境も強化する計画である。また、得られた成果の国内外の学会での発表や論文誌への投稿を予定している。
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