研究課題/領域番号 |
19K12083
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上岡 玲子 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (30401318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 姿勢改善 / 気質分類 / 姿勢改善インタフェース / 自発的姿勢改善 / エアークッション |
研究実績の概要 |
人が身体的,精神的,社会的に良好な状態であるとされるウェルビーイングの実現のために情報技術(IT)がどのように関与すべきか,その設計論の構築が重要になってきている.本研究では,ウェルビーイング向上のため個人の気質により個別化されたインタフェースを製作し,自発的に生活習慣を良行動に導くための動機付けとその維持ができるかを実証的に検証し気質と習慣化への動機付けまたその行動維持との関係性を明らかにする.具体的にはウェルビーイングに正の相関があるといわれる座位姿勢の姿勢改善を目標とし,改善を促すインタフェースを人の動機付けを左右する気質分類に用いられるBIS(Behavioral Inhibition System)/BAS(Behavioral Approach System)尺度から特性の分類を試み,気質別行動誘導インタフェースを構築し,良行動への動機付けと行動維持と気質の関係について行動特性,姿勢改善度,主観評価から定量的に評価し,良行動の習慣化のためのITのインタフェースについて,気質分類の有効性からその機序を明らかにする. 今年度は重心計測と画像検出による非装着な着座姿勢推定手法の検討と,効果的なフィードバックを行うための作業者の「気質」に関する調査を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重心計測と画像検出による非装着な着座姿勢推定手法の検討と,効果的なフィードバックを行うための作業者の「気質」に関する調査を行った. 着座姿勢の推定は,WEB カメラと,座面に圧力センサを備えた椅子型デバイスを用い、頸椎と骨盤の検出結果を組み合わせ,着座姿勢状態の推定の検討を行った. 9名の被験者の3種類のVDT作業中のカメラ画像と骨盤の傾斜とビデオカメラでの撮影画像記録を行い,良姿勢,不良姿勢を推定するための学習用データセットを作成した.頸椎の学習モデルは,ストレートネックを検出対象とすし画像データ1枚を1サンプルとして学習させ,ストレートネックである画像データを正解,そうでないものを不正解のサンプルとし合計 12000 (正解・不正解6000ずつ)のサンプルを作成した. 骨盤の学習モデルのサンプルは,取得したデータを約5秒ごとに区切り,録画した映像をもとに各区間を「骨盤直立」「骨盤前傾」「骨盤後傾」の 3 つの状態に分類し,データの特徴を6種類の重心に関わるデータとして値を算出し合計24324(各8108)サンプルのデータセットを作成した.作成したニューラルネットワークモデルは頸椎と骨盤の姿勢検出それぞれ異なるモデルを実装し,学習モデルの性能評価を行ったところストレートネック(正解率,再現率,適合率93%),骨盤の傾斜(正解率89%,再現率94%,適合率90%)の結果を得た. また,気質については,人間の気質を行動抑制系 (Behavioral Inhibition System; BIS) と行動賦活系 (Behavioral Activation System; BAS) の 2 次元で定義したBIS/BAS調査を学部学生に対し行ったところ(有効回答数36),罰(BIS)と報酬(BAS-RR)のどちらかに対し動機付けがおきやすいことが知見として得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果をもとに学習モデルとデータセットの改良によって着座姿勢推定の精度を高め,また調査した気質分析に基づいたインタフェースの製作を進める. 学習モデルについてはある程度の精度は達成できているので,今回作成した学習モデルを基盤に実証実験用に不特定多数の被験者に対しても許容範囲で推定精度を保てるようデータの補正,改良が必要である. また,インタフェース製作については,気質分析から,個人ごとに異なる気質が顕著に表れるわけではなく,2つの対極的な行動誘導気質が傾向として表れることが整理できたので,罰と報酬を反映させたインタフェースの検討をしたい.具体的には良姿勢を維持できた場合にはエアクッションを座り心地のよい形状に変化させる,マッサージなどの快刺激を提示するといったフィードバックを「報酬」として行い, 不良姿勢が続いた場合には座面の振動や不安定感の提示といった不快なフィードバックを「罰」として行うことを検討する. また,データ計測を阻害せずにエアクッションによるフィードバックを行う方法についても検討した上でシステムの統合を行い,長期利用を想定した実証実験によってシステムが提示する「報酬」「罰」が良姿勢習慣化に対して与えた効果について検証する.
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