研究課題/領域番号 |
19K12084
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
松田 剛 関西大学, 社会学部, 准教授 (70422376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スマートフォン / 姿勢 / 身体化認知 / ギャンブル課題 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度から引き続き、スマートフォン利用時の姿勢によるリスク判断傾向の違いを明らかにするための行動実験(研究項目2)を実施した。実験参加者は前かがみで座る前傾座位と、背もたれに寄りかかって座る後傾座位の2つの姿勢において、アイオワ・ギャンブリング課題を元にしたスマートフォン用アプリを操作した。この課題では賞金カードと罰金カードの割合が異なる4つのカードデッキの中から1枚ずつカードを引くことを繰り返し、最終的な所持金をできる限り多く残すことが求められた。デッキの半分はハイリスク・ハイリターンなデッキ(Hデッキ)に、残り半分はローリスク・ローリターンなデッキ(Lデッキ)になっており、全80試行を20試行ごとに区切った各ブロックのHデッキの選択回数からLデッキの選択回数を引いた(Net Score)を高リスク判断傾向の指標とした。 実験には成人20名(男女10名ずつ)が参加した。課題中にHデッキの存在に気付いた14名(男女7名ずつ,平均21.1歳)のデータを対象に、Net Scoreを従属変数とし姿勢とブロック数を要因とする二要因分散分析を実施したところ、姿勢の主効果と交互作用は認められず、ブロック数の主効果のみ有意であった(p = .019)。Net Scoreはブロックが進むにしたがって小さくなっており、アイオワ・ギャンブリング課題における健常者の反応と同様に徐々に危険なデッキを選ばなくなる学習効果は見られたものの、危険なデッキの選択傾向に姿勢の影響は見られなかった。つまり姿勢によるリスク判断傾向の違いは見られなかった。また、同時に測定した課題中の心理状態に関する質問項目を分析したところ、前傾座位の方が後傾座位よりも課題に対する集中の得点が有意に高く、快適さの得点は低かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
夏期休業中に緊急事態措置が発令され実験を進めることができなかった。授業期間中は研究代表者の空き時間が非常に少なく、参加者希望者とのスケジューリングが困難となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施した実験では姿勢によるリスク判断傾向への影響は認められなかったが、実験参加者の3割がハイリスク・ハイリターンなデッキの存在に気づいていなかったことから、今回用いた課題はリスク判断傾向を測定するための課題としては複雑すぎた可能性がある。そこで今後はよりシンプルなBalloon Analog Risk Task(BART)を元にしたスマートフォン用アプリを用い、研究項目2に再挑戦するほか、研究項目3「モバイル端末の画面サイズを変数とした心理実験」の一環として、異なる画面サイズの端末でBARTと文章に対する印象評価課題を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と同じ実験を引き続き行ったため、新たな装置やソフトウェアの購入が不要であった。また、有意差のない実験結果となったため研究成果を発表することもできなかった。繰り越された研究費は新たな実験のための準備費および、その成果の発表費用として使用する予定である。
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