本研究では、大規模システムの運用における共同作業者の相互影響すなわち「場の空気」を、(1)個人の作業への集中度、及び(2)作業者間の協調意識の、二つの指標により評価可能であると仮説を立て、複数作業者間で同時に計測された生理信号から作業者間の相互影響を評価することを試みる。 2021年度は、昨年度の感染症予防対策下で遅れが生じていた生体計測実験を順次実施し、得られたデータから作業者間の相互影響の分析をおこなった。その結果として主に以下の知見を得た。第一に、共同作業を行う二者間で作業分担意識を実験的に操作して同一作業中の脳活動を測定したところ、分担意識と関連して二者間の脳活動同調度が変化することを確認した。それに加えて、この作業分担意識に関連する脳活動同調度の変化は、リモート共同作業環境下でも観察され、リモート作業下でも協調意識を反映した「場の空気」の影響を評価できる可能性が示唆された。 第二に、作業指示者、追従作業者のように役割分担をした場合の場の空気の評価実験においても、発声指示により作業フィードバックを与える条件で作業指示者・追従作業者間での脳活動同調度変化が認められた。それに加えて、作業指示者の作業内容を変化させ業務負担を軽減した場合に、追従作業者との間の脳活動同調度及び個人の作業集中度と関連する瞳孔径に変化が生じることが観察された。 従って、共同作業に従事する複数作業者において、作業者間の脳活動同調度と瞳孔径の計測信号から、作業者間に存在する「場の空気」を評価可能であるという知見を得た。
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