研究課題/領域番号 |
19K12088
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
加藤 弓子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究員 (10600463)
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研究分担者 |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
三上 公志 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20434409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前庭眼反射 / 眼球運動計測 / 空間知覚 / 視覚刺激 / あいまいさ |
研究実績の概要 |
本研究では、VRやARの有効で安全な利用に向けて、「酔い」を誘発する感覚の不一致を、客観的に判断する指標として、前庭眼反射(VOR)の量的変化による、複数感覚共通の空間知覚精度測定を目指している。 2019年度は、当科が所有する、回転椅子による前庭刺激と眼球運動計測のシステムを基礎に、前庭刺激と同期して視聴覚刺激を提示可能な、感覚統合実験システムの構築を行った。前庭刺激と同期した視聴覚刺激の提示と、眼球運動の記録を同時に行うソフトウェアを開発し、これまでの前庭―視覚刺激による実験と同様に、前庭―聴覚刺激による実験を行う準備を整えた。具体的には、前庭刺激としての椅子の回転運動に同期して、音源位置を制御し、音源を前庭刺激と同期して移動する実験のための拡張インタフェースを作成した。さらに、眼球の画像に対する処理アルゴリズムを変更し、これまでの水平方向と垂直方向の眼球運動に加えて、眼球の廻旋運動の解析も可能とした。 新システムの開発の一方、旧システムを用いて、視覚刺激の強度と形状を変化させた際のVORの変化に関する実験を行い、Association for Research in Otolaryngologyの43th MidWinter Meeting (2020.1.25-29, San Jose, ARO Abstracts, vol. 43, 494 PS778)において結果を発表した。発表は「Effect of Visual Target Ambiguity on the Semicircular Ocular Reflex」と題し、視覚刺激の明るさと輪郭の鮮明さを調節した視覚刺激を用い、刺激のあいまいさに対応して、前庭眼反射の利得の変化量、特に反射の抑制量が、刺激のあいまいさに応じて変わることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、1)多感覚の刺激を制御可能な実験システムの構築、2)視覚刺激の強度とあいまいさの変化に伴う前庭眼反射の利得変化を定量化するための実験デザインの決定 、の2点を計画していた。1)と2)について下記の通り進捗している。 1)については、当初の計画通り、視覚に加えて聴覚、体性感覚の刺激を前庭刺激と同期して制御し、眼球運動を記録した動画より、水平、垂直、廻旋の眼球運の解析を行うソフトウェアの基盤を開発した。聴覚刺激や体性感覚刺激、あるいは他の感覚刺激を導入する場合の拡張が容易なAPIを用意している。 2)については、これまでの視覚刺激実験で用いられた明るい、輪郭のはっきりした光点に対して、明るさを減衰させ、ガウス関数を使って輪郭をぼかすことで、刺激のあいまいさを調節し、前庭眼反射への影響を確認する実験を行った。視覚刺激の絶対位置を固定し、前庭眼反射を強調する刺激を提示した条件と、視覚刺激を頭部前面の正中位置で保持し、前庭眼反射を抑制する刺激を提示した条件で実験を行い、前庭眼反射の抑制量は、刺激の明るさと刺激の輪郭の不鮮明さに対して変化の幅があり、指標として前庭眼反射の抑制量が有力であるとの知見を得た。この実験結果はAssociation for Research in Otolaryngologyの43th MidWinter Meeting (2020.1.25-29, San Jose, ARO Abstracts, vol. 43, 494 PS778)で発表した。 2)の実験過程において、前庭眼反射の利得が変化するまで輪郭を不鮮明にすると、刺激を周辺視野の範囲まで広げる結果となった。他の感覚と比較するには、周辺視野の影響を明確にしておく必要がある。周辺視野の影響についての検討は、2020年度に実施予定の、視覚刺激による詳細実験の中で検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に行った前庭-視覚実験により見出された、刺激の曖昧さとVORの変化量との関係について、より詳細に、刺激の強度と不鮮明さのパラメータを検討することで、空間知覚の精度を客観的に示す指標としての可能性を判断する。 2019年度の視覚実験において、輪郭の鮮明さに対する実験結果に周辺視が影響している可能性が考えられた。そこで、2020年度に計画している実験については、周辺視野の刺激を調節した条件を加えたより精度の高い実験を行う。周辺視の影響が大きい場合、2021年度に予定していた、聴覚あるいは体性感覚での評価実験を縮小し、前庭-中心視と前庭-周辺視による空間知覚の精度とVORの関係を明確にする。そのうえで、中心視による指標と周辺視による指標の両者について、聴覚の空間知覚との対応可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、2019年度から2021年度を事業期間としており、直接経費、間接経費を合わせて、2020年度520,000円、2021年度1,040,000円を予定している。 また、2019年度助成金のうち、東北大学から3月の学会参加のための出張旅費を予定していたが、コロナウィルスの感染拡大防止のため、学会の開催が中止され、2020年度への繰り越し金169,420円が発生した。出張を予定していた学会は、音響学会2020年春季研究発表会(3月16日から18日:埼玉大学)である。
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