研究課題/領域番号 |
19K12106
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
黒川 弘章 東京工科大学, 工学部, 教授 (20308282)
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研究分担者 |
高坂 拓司 中京大学, 工学部, 教授 (80320034)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 並列計算 / GPU / OpenMP / 分岐点探索 |
研究実績の概要 |
2019年度、2020年度に引き続き非線形力学系における分岐点探索アルゴリズムであるNLPSOの並列化に取り組んだ。基本的なCUDAによる並列化はできており、2021年度は最終的な目標であるNLPSOのアプリケーション化に取り組んだ。アプリケーション化にあたって仕様を再検討した結果、並列化の手段にCUDAとは別の選択肢としてOpenMPを用いることとした。OpenMPによる並列化では処理をCPUのスレッドに分散するためメモリの共有で自由度が高く、イタレーションごとに値の共有が生じるPSOでは有利である。ただし、並列度は極端に下がるため、複雑な力学系が対象となるとCUDAを用いた場合よりも実行時間が長くなることが多い。これに関する性能評価も課題として加えた。また、CUDAに比べて並列度が低下する一方で、一般的なCPUでの実行が可能であることから汎用性の向上が見込まれる。このような検討の結果、CUDAにつていはオプションとしての利用を想定し、OpenMPを優先して開発を行うこととした。現状のNLPSOアプリケーションは力学系を定義する方程式、パラメータ探索範囲、いくつかのハイパーパラメータだけを与えて、周期倍分岐とサドルノード分岐についてのパラメータ分岐図を得ることができる。これはヤコビ行列を求める際に必要な微分を数値微分で求めることで実現しているが、研究協力者の研究成果を元にしたものである。NLPSOアプリケーションは2022年4月にGithubで公開された。現在は離散力学系にしか対応していないため、次年度は主に連続系の対応を進める。懸案事項であったPSOのアルゴリズムにおける打ち切り回数の動的制御については決定打となる解決策が無く限定的な効果に止まっているが、OpenMPでの実装に切り替えたことで優先度を下げ今後の課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
並列化NLPSOの開発については概ね当初の予定通り研究を進めることができており、並列化プラットフォームに関する方針転換があったものの2022年4月にアプリケーションの公開に至っている。また、成果発表についても採録決定(2022年4月以降に公開予定)の3本の原著論文がある。2020年度からのコロナ禍における学務エフォートの激増と大学設備利用制限の影響が大きく、アプリケーションの完成度を高めるため、また最後の成果発表として論文をまとめるために研究期間延長の判断に至ったが、現段階で当初の目標を概ね達成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
NLPSOアプリケーションの公開を達成したことで本研究課題の大きな目標を達成したと考えている。今後は、学会発表や論文を通したアプリケーションの周知を行いたい。また、アプリケーション開発の課題としては連続系への対応、CUDAオプションの実装が課題として挙げられており、2022年度の課題として取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度以来のコロナ禍において出張が中止・自粛となり様々な機会を失ったことと、対外発表の遅れによって未使用の経費が生じた。2022年度においては当初の予定の中でも特に対外発表を中心とした未達成部分を実行するために経費を使用する計画であるが、移動を伴う活動についてはコロナ禍の影響を踏まえて適切に判断していく必要があるため計画が変わる可能性がある。また、並列化プラットフォームとしてOpenMPを採用したことで、その評価のためにコア数の多いプロセッサを購入する必要が生じているため、一部分はそのための経費に充てる計画である。
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備考 |
アプリケーションの公開を行っているgithubのページ。
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