研究課題/領域番号 |
19K12112
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松林 優一郎 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (20582901)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然言語処理 / 意味構造解析 / 省略解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、文を「正確に読む」ために必須となる省略解析の技術の性能向上を目指し、1、2文単位の局所的な文だけを見て解析を行う従来型の意味解析手法を改良し、正確な意味理解に必要不可欠な要素である (1) 先行文脈の文意の蓄積 (=動的知識) に基づいて後方の意味を理解する解析モデルの構築と (2) 推論に必要な常識的知識 (=静的知識) の効果的・効率的な表現方法の確立、 (3) これら動的知識と静的知識を融合した自然な推論に基づく意味解析の実現を行うことで意味解析技術の発展を目指している。 昨年度に得られた省略解析における学習手法の知見から、 (2) 推論に必要な常識的知識 (=静的知識) の効果的・効率的な表現方法については、大規模データによって学習される言語モデルについて、省略解析のために必要な知識に重点的に学習バイアスをかけながら追加の学習を行うことで実現する方針を取った。 また、昨年度作成した (1) の学習部分と、 (2) で用いる学習手法の双方に対して同一のタスク形式を用いて定式化を行うことにより、 (3) で目指す静的知識と動的知識の自然な融合を実現する新たな手法を考え、これを実装した。 これらの手法を用いて実験を行い、結果として、日本語の省略解析タスクにおいて昨年度の結果をさらに超えて、これまでの結果を大きく上回る解析精度を実現することに成功した。この成果は主要国際会議論文として執筆を終え、投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の骨子となる部分課題のうち、「文脈の蓄積モデル」については昨年度に概ね順調な進展を見せた。本年度は、残りの部分課題である「静的知識の推定モデルへの組み込み」と「静的知識と動的知識の融合による解析」について、解析精度の大幅な向上という形で一定の成果を得た。
研究成果の対外発表も順調であり、昨年度の成果は本年度に主要国際会議論文への投稿が完了しており、今年度の成果については、言語処理分野で国内最大規模である言語処理学会で発表を行ったほか、現在国際会議論文への投稿中を準備している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にしたがって、引き続き「静的知識の推定モデルへの組み込み」と「静的知識と動的知識の融合による解析」の精緻化を行っていく。最終年度であるため、国際会議論文を中心にこれまでの研究成果の対外発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究成果を国際会議等で発表するための諸経費の一部として次年度に繰り越す。
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