研究課題/領域番号 |
19K12120
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
間普 真吾 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70434321)
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研究分担者 |
呉本 尭 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (40294657)
平野 綱彦 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (00382333)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 深層学習 / ニューラルネットワーク / 医用画像 / 音声認識 |
研究実績の概要 |
深層学習は一般に大量の教師データが必要であるが,医療分野では臓器ごと,疾患ごとに十分な量の教師データを得ることが難しいため,教師データの少なさをカバーできる方式が必要である.本問題を解決するため,今年度は以下の研究を行った.
1.ある医療施設の医用画像を用いて学習した診断システムを,他の医療施設で使用する場合,画像の撮影条件等の違いの影響があり,そのまま転用しても良い性能が得られない.この問題の解決のため,施設間の画像の違いを補正(変換)するシステムの研究を行った.具体的には,Cycle GANと呼ばれる深層学習アルゴリズムを用い,山口大学医学部附属病院,大阪大学医学部附属病院で撮影された胸部CT画像に対し,変換を実行した.さらに,びまん性肺疾患の陰影識別問題に適用し,補正の前後で識別率を比較し,補正の有効性を確認した.Cycle GANは教師ラベルを必要としない変換手法であるため,教師データの取得にかかるコストが少ない利点もある. 2.胸部単純X線画像における正常・異常識別システムの構築を目的とした転移学習方式の研究を行った.深層学習モデルの一つであるResNet-50をベースとし,ImageNetデータで学習済みのモデル,およびImageNetデータで学習済みのモデルをさらに事前学習用画像で追加学習したモデルを作成し,それらを検証用の画像の識別に転用しその効果を検証した. 3.画像のみならず,音声に対する診断システムの構築を目的とし,研究代表者らがこれまでに行ってきた教師なし事前学習つき肺聴診音識別器の学習方式を畳み込み長短期記憶ネットワーク(C-LSTM)に展開し,畳み込みニューラルネットワークおよび畳み込みを使用しないLSTMと比較し,聴診音識別に有効なネットワークの構成を明らかにした.なお,評価には山口大学医学部附属病院から提供された肺聴診音データを使用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像,音声の医療データに対し,教師ラベルつきデータが少ない場合に有用な方式を構築でき,また医療施設間のデータの違いを教師なしで補正する方式の構築とその有用性の検証ができた.したがって,今年度の研究を通して得られた知見も含め,次年度以降,多様な疾患に対する診断システムへの展開や,アルゴリズムの改良への基盤を構築できたと考えるため,おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた成果を基盤とし,多様な疾患に対して展開を行っていく.特に,甲状腺疾患の識別を目的とした病理画像の研究,多様な検査情報を基にした呼吸器疾患の識別システムの研究を予定している. アルゴリズムの観点では,自己符号化器を用いた教師なし学習を,半教師あり学習へ拡張すること,また教師データが少ない場合により効果的な学習が可能な方式を検討したい.
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